2013年9月12日木曜日

書評 藤井純一『監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略』(光文社新書)

「中の人」が書いた本だとは知りませなんだ。日本ハムファイターズがファンに愛され、かつ強いチームである秘訣が明かされる。

 2004年に北海道に移転後、北海道日本ハムファイターズは道民の圧倒的な支持を受けるチームになり、また優勝争いの常連となった。かつての
「東京の、何だか冴えないチーム」
からの変貌には、どのような秘密が隠されているのか。それを最もよく知る人物である前球団社長みずからが、チーム運営・チーム経営の秘訣を著したのが本書である。

「赤字は本社(日本ハム)に補填してもらえばよい」という旧弊を葬り去り、黒字経営を達成するために藤井氏が行った構造改革・意識改革の具体例が次々と披露される。
 藤井氏は、収入を増やすために必要なのは、その場しのぎの一発イベントではなく、何度も球場に足を運んでくれるファンを増やすことであるという原則を徹底する。それを「Fan Service 1st」という標語にして全社員で共有する。分かりやすい目標を立て、その目標を達成すべく、全員で突き進んでいく様子が伝わってくる。
 私が特に印象に残ったのは、次の2点だ。

・社内の垣根を低くする(セクショナリズムの廃止)
・コアなファンを増やし、大事にする(広く浅くとは逆の方向)

このようにまとめてしまうと「当たり前やん」と思われるかもしれないが、自分の属している組織を顧みても、意外に簡単ではないことが分かる。この「当たり前だけど、簡単ではないこと」を達成するためのヒントが随所に散りばめられている。

 直接には「スポーツチームの運営論・経営論」の本なのだが、スポーツチームにとどまらず、すべての組織に当てはまる事例がたくさんあった。私も、自分の仕事に応用できそうなヒントをいくつももらった。

 ただし、あくまでも「球団」の運営論の本であり、個々の選手の管理・育成にはあまりページが割かれていない。そちらはそちらで、GMを中心に一貫した体制が敷かれているのだろう。ダルビッシュをはじめ、中田翔、糸井らの選手が、なぜ次々に台頭してくるのかなどは、本書の主題ではない。

 本書の袖には「最強のスポーツビジネス論」という言葉が書かれているが、それも納得。いや、それを越えて、スポーツにとどまらない最強ビジネス論が展開されているとまで言ってもよいのかもしれない。



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