2015年3月16日月曜日

【書評】森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)

確かにいそう。こんな京大生。


「この本、面白かったわ。京大生には、相変わらずヘンなヤツが多いなあ」
「いや、これ小説なんやけど…」
「え、そうなん? 実話かと思ったわ」
とはちょっと大げさだが、こんな脳内会話をしたくなる京大生(男1名、女1名)が主人公。
 男のほうは、頭でっかちの理系学生。万年床ですべてを済ますという、典型的な(?)男子京大生だ。女のほうは、いわゆる天然ボケの、世間知らずの文系学生。生真面目で純粋なのだが、かなり抜けていて、すれていない女子京大生である。
 実際は、こんな京大生は小説当時もいまも天然記念物なのだろうが
「こんなん、いるいる」
と言いたくなるキャラクターだ。

 その男子学生が、その女子学生を追いかける。いまなら間違いなくストーカー容疑で逮捕されるであろうレベルだ。
 女子学生を追いかける過程で、さまざまな魑魅魍魎が登場する。自称天狗や古書の神様が現れ、宙に浮いたり、過去に手離した古本が出てきたり、ファンタジーな世界が展開する。いつの間にやら異世界に誘われているのだ。
 その舞台が京都というのもまたいい。木屋町や先斗町、下鴨納涼古本まつり、京大の学園祭と、メジャーでこそないが、いかにも京都的な場所やイベントが舞台になっているところが憎い。著者が京大生として、京都で生活していたからこそ書ける、ディープな京都が満載。京阪中書島駅が出てきたときには、歓喜のあまり気を失ってしまった(ウソです)。

 現実の京都や京大生と、ファンタジックな京都をミックスさせた森見ワールド。
「そうだ京都、読もう」
と思ったときには鉄板の一冊。




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