震災直後は、安否情報や日用品の入手できる店の情報などを中心に、事故に直結した報道がなされる。それが落ち着いてきたところに、原発事故の問題が持ち上がる。
その間、何を、どのように伝えればよいのか、社員たちは苦悩する。視聴者から寄せられる情報に対して、どこまで裏を取ればよいのか。原発事故について、どのような姿勢を取るべきなのか。さまざまな問題点が噴出する。
そのようなラジオ福島の苦闘が、社員たちの実名を挙げながら描かれている。マスコミの役割を根本から問いただされるような事態に面した社員たちが、どのような思いで放送を続けたのかがひしひしと伝わってくる。
そういった様子が、淡々とした文章で綴られているところも本書の特徴の一つだ。変に力を入れすぎず、事実をできるだけ客観的に伝えようとする姿勢が見られる。これは、著者の片瀬さんが、福島在住の直接の被災者ではなく、取材によって本書を著していることとも関連があるのだろう。
ただ、私にはこれが少し物足りなく感じた。あまりにも淡々としすぎていて、臨場感にやや欠けるように思った。ただしこれは、私が関西にいて、被災の現場の雰囲気から遠いところにいることが大きいと思われる。
マスコミというものの本来の役割を考え直し、ネット時代の現代において、マスコミはどのようなかたちで報道を行うべきかを考えるには非常に参考になる本である。
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