2013年2月2日土曜日

書評 梨木香歩『りかさん』(新潮文庫)

 少女と人形の、心暖まる交流を描いた小説。

 ようこがおばあちゃんにお願いしたのは、リカちゃん人形。おばあちゃんが「よっしゃ、よっしゃ」と、ようこにくれたのは「りかさん」という名の市松人形…。
「りかちゃん違いやろっ」
とツッコみたくなるが、このりかさんには、人と心を通じることができるという力があったのだ。おばあちゃんのアドバイスを元に、りかさんと心を通じていくようこ。少女と人形が信頼関係を築いていく過程が心地よい。
 ようこは、人形人生豊富なりかさんに導かれて、さまざまな人形たちの心を知っていく。そこから見えてくるのは、現実世界の人間の心の動きだ。ちょっと切なくほろ苦いが、ほのぼのと心が温まるストーリーが3編収められている。

「人と心を通じる人形」という一見オカルト風の設定も何の違和感もなく受け入れられるところが、梨木ワールドの真骨頂だ。
「そういえば、子どもの頃には友達だったあの人形はどこへいったのだろう…」
読んだあとは、こんなことが気になるかもしれない。




にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】東野圭吾『あなたが誰かを殺した』(講談社)

 加賀刑事シリーズ、最新第12作。娘が学校の図書館で借りてきてくれたので、文庫化前に読むことができた。  このところ、加賀の人生に絡んだ話が多かったが、シリーズの原点回帰。加賀は探偵役に徹して事件を推理する。いかにもミステリーなミステリー小説だ。  別荘地で起きた連続殺人事...