サラブレッドの美しさ、競馬にかかわる人たちの夢、血統のうんちく、馬券勝負など、競馬の魅力が余すことなく披露されている。競馬バカを自認する私が、なぜいままで読んでいなかったのだろうか。
物語は一頭の名馬「オラシオン」を中心に進んでいく。まず、名前がかっこいいよなあ。スペイン語で「祈り」という意味だそうだ。
そして、オラシオンが生まれた牧場のせがれ→オラシオンの馬主→馬主の娘→馬主の秘書→オラシオンの騎手、の順に、章ごとに視点が変わっていく。ストーリーの中心にはいつもオラシオンがいるのだが、オラシオンはあまり登場しないのが憎いところだ。
生産者が生まれた子馬にかける夢、馬主が競走馬にかける夢、騎手が乗り馬にかける夢、競馬オヤジが馬券にかける夢…、サラブレッドにはさまざまな夢がかけられている。それらたくさんの夢が絡み合い、話は進んでいく。しかし夢をかけるといっても、きれい事ばかりではすまない。さまざまな苦難を乗り越え、それぞれの登場人物が夢を追いかける様子が、華麗な文章で綴られる。
この小説を読んだあとの週末に、100円でよいから馬券を買ってレースに参加して、できれば競馬場で生のレースを観戦すれば、きっと競馬の面白さを感じてもらえるだろう。
私は今のところ馬券に夢をかけるしかない一介の競馬オヤジに過ぎないが、この小説を読んで
「自分の持ち馬に夢をかける馬主にならねば」
という使命感に燃え始めた。
「どこからそんな金が湧いてくるねん」
それはこれから考える。
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