『宇宙は何でできているのか』で一般向け科学書の書き手としてブレイクした村山氏の最新作。今度のテーマは素粒子だ。
物質を小さく分けていくと、原子になるのはご存じだろう。しかし原子も物質の最小単位ではなく、原子は陽子、中性子、電子でできていることが明らかになった。ここまでは我々の想像力が何とか働く世界で、中学や高校の教科書にも載っていることである。
ところが、陽子、中性子、電子も物質の最小単位ではなく、素粒子でできていることがわかってしまった。さらに、素粒子は物質を作る材料となってるものだけではなく、他にもたくさんの種類があることまで明らかになってしまった。
この素粒子を、一般人にもわかるように解きほぐしたのが本書である。一流の科学者であると同時に、一般向け科学書の一流の書き手でもある村山氏が、大胆な比喩(これがわかりやすい)を交えつつ、素粒子や量子力学について解説した。
村山氏は、身近な話題を比喩に用いて、難しい話をグッと身近に感じさせてくれる。たとえばヒッグス粒子を説明している箇所では、こんなたとえを用いる。
たとえば、『千と千尋の神隠し』に登場したカオナシ、『ハリー・ポッター』シリーズに出てきたディメンターなどは、本人の顔がわからないですよね。ヒッグス粒子も素粒子の世界ではのっぺらぼうで顔が見えないのです。
いままで雲の上の存在だったヒッグス粒子が、とても身近に感じないだろうか。本書を読んで、いままで漠然としていた素粒子のイメージが、かなり明確になった。
また、現在の素粒子論がどのような位置にあり、どのような方向に向かって、何を解き明かそうとしているかもよく理解できた。近い将来、宇宙の成り立ちはかなり深いところまで明らかになるのかもしれない。
とはいえ素粒子はやはり難しい。おそらく、イメージや比喩で理解できることには限界があるのだろう。その限界ギリギリのところまでかみ砕いてくれたのが本書である。これ以上のことを理解するには、ちゃんと勉強するしかなさそうだ。
この手の本を読むといつも思うことなのだが(したがって、この手の本の書評にはいつも書いてしまうのだが)、物質を小さいほう小さいほうへたどっていくと、話は宇宙の誕生に行き着いて、無限に広い宇宙のことを考えざるを得なくなるというのが、とても興味深い。
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