アガワ氏は週刊文春で対談の連載を持っており、橋本元総理の夫人、大相撲の若貴兄弟、元メジャーリーガーの松井秀喜氏、映画監督の是枝氏、落語家の笑福亭鶴瓶などなど、各界の著名人にインタビューをしている。そうそうたるメンツを相手に対談をこなしてきた実体験を元に語られるのだから、臨場感がある。
一つ一つの極意はとても分かりやすく書かれており、それが35に分けられている。しかし、アガワ流極意は一方向には収まらない。たとえば
「相手の話をじっくり聞くことが大事」
と書いたあとで
「でも、聞いてばかりではダメ」
などと書いてあったりする(書いてあることに矛盾があるわけではない)。
このように体得が難しいアガワ流だが、その根底にあるのは
「自分の話をしたくない人などいない」
ということだろう。語り手に興味のあることを気持ちよく語ってもらうための「あれやこれや」がアガワ流にまとめられている。
もちろん、日々の仕事や生活にも応用できる話があちこちに書かれている。私も仕事柄、相手の話を引き出して情報を得なければならない場面が多いので、おおいに参考になった。
しかし勘違いしてはいけないのは、聞き手が興味を持たなければ、何も始まらないということだ。
「あなたの話が聞きたいのです」
という思いがなければ、話は引き出せない。当たり前だが、大事なことである。
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