取材ではない、生の体験が伝わってくる良書
オーストリア、ハンガリー、セルビアと、ヨーロッパの非メジャー国(失礼)に実際に居住し、その間にヨーロッパ各国を頻繁に行き来した日本人コンビにしか書けないうんちくが満載。片野氏と須貝氏が、ヨーロッパ各国の「食」を切り口に、その国の歴史を交えながら、それぞれの国民の気質を分析する。
著者コンビは、本書を書くために各国を訪れたわけではない。これまでのヨーロッパ生活で各国を訪問した経験を、本書に著したのだ。だから上辺だけの記述に陥らず、実際の生の体験が伝わってくる。
取り上げられている国は全部で20。英仏独の大国から、旧ユーゴの小国まで、さまざまな国の国民的料理と、それを支える国民気質が紹介されている。どれも興味深いのだが、やはり「料理とヨーロッパ」といえば、イギリスを取り上げないわけにはいかないだろう。本書でも真っ先に紹介されている。
イギリス料理はなぜまずいのか。産業革命の発祥地であり、アメリカの母国でもある先進国イギリスの料理がなぜまずいのだろうか。
普通なら「いやいや、実はイギリス料理も美味しいんですよ」と、お茶を濁すところ。しかし本書は大胆にも「イギリス料理がまずい」ことは公然の事実とばかりに、歴史や国民気質までさかのぼって徹底的に分析する(笑)。
興味深かったのはハンガリー。著者の二人が以前に住んでいたということもあり、その思い入れが感じられる。その思い入れを支えるのは、やはり「食」。食事が合わなければ、その国が好きになれるはずがないだろう。
取材ではない、生の体験が伝わってくる良書。ヨーロッパに行きたくなること請け合い。
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