2016年11月30日水曜日

【書評】宮部みゆき『魔術はささやく』(新潮文庫)

宮部氏お得意の「背筋の凍る狂人的な殺人者」が登場


 こちらの言葉は決して通じない、狂人的な殺人者が登場するのは、後の模倣犯などを連想させる。宮部氏お得意の人物像だ。あんなに人のよい宮部氏に、どうしてこのような背筋の凍る人物が描けるのかいつも不思議だ。
 また犯罪者の家族や被害者への社会的な仕打ちが読者の心をむち打つ。家族や被害者への悪意が広がって定着していく様にはいつもムカムカさせられる。これも後の宮部作品につながるテーマの一つだろう。
 決して読後感のよい作品ではないが、また読みたくなるのが宮部小説。

《あらすじ》
 1989年に出版された、宮部氏の最初期の作品。横領犯を父に持つ男子高校生の守が主人公。守は義父の巻き込まれた連続殺人事件の謎を追ううちに、自らの人生の核心に近づいていく。全く独立だったはずの事件と人生が徐々に重なり合い、ついには一つになる。人はどこまで人を赦せるのか。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]
魔術はささやく改版 [ 宮部みゆき ]
価格:766円(税込、送料無料) (2016/11/30時点)

楽天ブックス

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...