犬部とは、犬、猫をはじめ、飼い主に恵まれない動物たちを保護し、新たな飼い主に譲渡するまで世話をする学生団体。その奮闘ぶりを、犬部の歴史をたどりつつ、さまざまな動物のエピソードを柱に綴ったのが本書である。
「犬部」は北里大学獣医学部の学生たちが運営するサークルで、動物愛護団体だ。そこへ保護される動物たちと、部員たちとの、心暖まる交流が描かれる。
飼い主にひどいことをされていたのか、それとも生まれたときから飼い主はいなかったのか。いずれにしろ、心も体も疲弊している保護動物たち。ところが、犬部員たちが世話をするうちに心も体も回復し、愛らしい姿を見せるようになる。その過程も千差万別。それぞれの話にそれぞれ心を打つエピソードがあり、それが涙や笑いを誘う。
とはいえ相手は生き物だし、サークルといっても動物愛護をしているのだから社会的責任もある。心暖まる話ばかりではすまない。ときには厳しい現実に直面する。本職は大学生である彼らが、どうやってその壁を乗り越えていくのか。若者たちの奮闘ぶりも堪能できる。
以上が本書の概要であるが、私にはもう一つ、本書で学ばせてもらったことがある、それは組織運営の難しさだ。
犬部はまだ新しい団体である。太田さんという創始者が犬部を作ったのが2004年。たぐいまれな行動力をもつ太田さんが引っ張るかたちで、犬部は発展していく。その後を継いだ池田さんも、これまた飛び抜けた活動力で、犬部の活動の輪を広げていく。
しかし、大学生の活動である以上、2、3年で代替わりしていかねばならない。二人のカリスマ(といってもよいだろう)の抜けた後、組織としても大きくなった犬部にはさまざまな問題が勃発する。カリスマなき後、「普通の人」が運営できる組織への変革を迫られる犬部。まさに社会の縮図だ。
このように本書からは、組織というものの継続、継承、発展の難しさも見えてくる。今後の活動が大いに気になるところだ。
動物愛護にはいろいろな問題がつきまとうのだろうが
「一部の動物だけが救われるなんて不公平だ」
「自己満足だろ」
という批判や中傷を受けながらも奮闘する学生たちに賛辞を送りたい。わが家で将来ペットを飼うことになったときは、動物愛護団体から譲渡してもらおうと思った。
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