2013年10月24日木曜日

書評 岩崎秀雄『〈生命〉とは何だろうか―表現する生物学、思考する芸術―』(講談社現代新書)

「合成生物学」、すなわち「人工生命を生み出してやろう」という学問分野があることをご存じだろうか。

 2010年、クレイグ・ベンターという生命科学者が
「人工生命を作っちゃいました」
と発表した。自分たちで一から合成したDNAを元に、人工細菌を生み出したのだ。とはいえこれは、たしかに人工DNAから生命が誕生したのだが、DNAが発現するシステムは既存の生物のものを利用した成果である。しかし、人工合成したDNAから生物が誕生したことは事実であり、広い意味で人工生命と言えなくはないだろう。
「でも、いまいる生物がいなければ、この人工生命は生まれないのだから、何か違うような…」
 そりゃそうだ。では、どこまでいけば「人工」生命と言えるのか、その線引きは難しい。
 もっと言うと、どういうものを作れば人工「生命」と言えるのか、その線引きはもっと難しい。それが本書の主題「〈生命〉とは何だろうか」なのだ。
 合成生物学者である著者が、この問いに真摯に答えたのが本書である。

 よくある生命の定義は「自己増殖能を持つ」というものだ。それなら、たとえばコンピューターで自己増殖能を持つプログラムを作れば、それは人工生命と言えるのか。これも一種の人工生命だとする考え方もある。
「でも、やっぱり実体がないとね」
 それなら、ポコポコ分裂する有機物を作れば、それは人工生命なのか。
「それは、生命というよりも『モノ』じゃないの?」
それも分かる。じゃあ、どこまでいけば生命といえるのか。結局ここに帰ってくる。

 著者は「科学」という観点に加え、「芸術」とうい面からも生命の定義に迫る。生命の本質を解き明かそうとする営みは科学に限らず、芸術もまたそうだというのだ。
 人工細胞を合成しようとする科学者としての営みと、芸術を通じて生命に迫るアーティストとしての営み。この二つの営みを行っている著者だからこそ見える観点がある。著者は科学者が(いちおう)本職なので、話の重点はそちらに置かれているが、芸術という観点を絡ませることによる、新たな見解が目を引く。

 もちろん本書だけで結論は出ないのだが、今後、「生命とは何だろうか」を巡る議論が、さまざまな形で巻き起こるだろうことは想像に難くない。
 生命とは、究極には物質でしかないのか、それとも物質だけでは生命は生まれないのか。この問いを考えるうえで、新たな視点を提供してくれる一冊である。



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2013年10月23日水曜日

書評 阿部恒久『ヒゲの日本近現代史』(講談社現代新書)

 ヒゲ、剃ってます? それとも、生やしてます?

 日本におけるヒゲの流行り廃りを論じた本。古代から現在に至るまで、ヒゲのあり方を歴史に剃って、いや沿って、考証する。別にあってもなくてもよいようなものに見えて、剃ることにも生やすことにも、それなりの背景や意義があることが分かって興味深い。

 いまの日本では、無精ヒゲが流行している。イチロー(ヤンキースに入団してから剃ってしまったが)や阿部寛が代表格か。一方、皇族に目を移すと、昭和天皇は生やしていたが、いまの天皇は生やしていない。皇太子は生やしていないが、その弟は生やしている。そういえば、政治家には生やしている人はあまりいない。著名なビジネスマンも、ヒゲは少数派だ。
 このように、ヒゲにも、個人的な趣味趣向だけでなく、いろいろな背景事情がからんでくることが垣間見える。
 どのような流れでこういう現状が定着したのかを、歴史を紐解くことによって明らかにしたのが本書である。もちろんヒゲ剃り機器の発達はヒゲ文化に影響を与えたが、それだけでなく、戦争、女性の社会進出、サラリーマンの増加などが大きくかかわっていることが分かる。

 かくいう私も、ブームに便乗して無精ヒゲを生やしている。家族などにはかなり不評である。なぜなら、かなりヒゲが薄いのだ。しばらくほうっておいても、モミアゲとあごヒゲがつながらないくらい薄いといえば分かってもらえるだろうか。だから、少々伸ばしたところで、まったく格好良くならない。
 それでも生やすのは、手入れが楽チンだからだ。一度整えれば、一週間はほったらかしておける。われながら「ホンマに無精やなぁ…」と思わないでもないが、無精ヒゲだからそれでよいのだ(意味不明)。
 でも、デメリットはある。最近、めっきりモテなくなった。え? それはヒゲのせいではないだろうって? それを言ってはいけません。



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2013年10月20日日曜日

予想の回顧 菊花賞、富士S、室町S 2013

 今週は菊花賞。
 ◎エピファネイアは好発を切る。スタートがよすぎたのか、1週目の4コーナーからスタンド前で行きたがるところを見せたが、1コーナーあたりで折り合いがついた。こうなれば、あとは独壇場。4コーナーで先頭に並びかけると、ズバッと伸びて5馬身差の圧勝。
 中団から差してきたサトノノブレスが2着に入ったため、馬券はハズレ。
 予想の段階でも書いたが、荒れる菊花賞の時代は終わったようだ。

 土曜は東京で富士S。
 ◎ガルボは押し出されるようにしてハナに立つ。競りかけてくる馬も、かかって行ってしまう馬もおらず、持ったままで直線を向く。願ってもない展開だ。残り400 mで満を持して追い出して粘り込みをはかったが、最後は力尽きて7着。結果論になるが、切れる馬ではないだけに、もう少し早めにスパートしてもよかったのかもしれない。

 土曜の京都メインは室町S。
 ◎ウインラーニッドは3、4番手から。いい手応えで直線へ。しかし、内を突いたがふさがれてしまいジエンド…と思いきや、立て直して外に出すと、しぶとく伸びて2着に来てくれた。お陰で、安かったが馬連を取った。馬は頑張ってくれたが、福永騎手はちょっとヘグったか。スムーズなら際どかっただろう。

 今週は3戦1勝で、1勝も本命サイドだが、他もチョロチョロ当たって、トータルはプラスを計上。この調子で有馬記念まで突っ走りたいものだ。

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2013年10月19日土曜日

2013 菊花賞 オレの予想を聞いてくれよ

 さあ今週は菊花賞。京都の誇るマラソンGIレースで、私も大好きなレースの一つだ。一時期はとんでもなく荒れたレースが続き、レースの格も落ちたように感じた時期もあったが、ここ3年連続で1番人気馬が連対。ここ2年は馬連も10倍以下と「荒れる菊花賞」は終わりを告げつつあるように思う。
 荒れるレースもときにはよいが、菊花賞はやはり「強い馬が勝つ」レースであってほしいものだ。

 さてレースにいってみたい。
 本命は◎エピファネイア。上にも書いたように1番人気馬は3年連続で連対中だし、単勝2倍を切る馬はここ10年で3戦3勝である。折り合いの不安は依然つきまとうが、厩舎の努力もあり、改善してきているようだ。あとは騎手次第だろう。福永騎手、頼みまっせ。
 相手は穴っぽいところを選びたい。このレース、穴を開ける馬の代表的なパターンが、夏に長距離の1000万条件を勝ってきた馬。今年はバンデがそれに当てはまるが、前々走でセントライト記念6着という成績が引っかかる。順番が逆なら買えるのだが。
 というわけで、相手はまずヤマイチパートナーラストインパクト。ともに前々走で1000万条件を勝ち、前走は神戸新聞杯で掲示板外というローテーション。神戸新聞杯の成績は気になるが、阪神と京都では要求される能力が違うということにしておきたい。
 あと2頭は、神戸新聞杯掲示板組からアクションスタータマモベストプレイ。神戸新聞杯4、5着の馬があまりに軽視されすぎていないか。

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2013年10月18日金曜日

2013 富士S、室町S オレの予想を聞いてくれよ

 台風一過、めっきり涼しくなった。朝晩は寒いくらいだ。GIシーズンを前に、みなさん風邪を引かないように気をつけましょう。ちなみに、わが家では息子(3歳)がさっそく風邪を引いた。

 そんな土曜の東京メインは富士S。その昔は、JRAには珍しい国際競争であり、外国馬がJCの叩き台にしたり、JC出走馬の帯同馬が出たりしていた。
 その頃はどんな馬が勝っていたのだろうと思ってさっそく調べてみると、外国馬の勝利は4回。その中にはトリプティクの名もある。GIを九つも勝った名牝で、このレースでの勝ちっぷりが評価されてJCでは1番人気に押されたのだが、4着に敗退した。走る姿は見たことがないのだが、ダビスタでけっこう強かったので印象に残っている馬だ。

 さて、レースにいってみたい。近年はマイルCSの前哨戦に位置づけられているが、本番との結びつきは薄い。今年も、そんな感じのメンバーだ。
 とはいえ低レベルというわけではなく、重賞の掲示板常連組に、生きのいい登り馬が加わった好メンバーと言えるだろう。
 その中から、本命は◎ガルボ。一時期ほどの勢いはないが、いつも堅実に走る。スローペースが見込まれるここは、ポンとハナを切って粘り込んでほしい。ポン掛け実績がないが、今回は追い切りの数をこなしているし、力は出せると見た。
 推奨穴馬は、同枠のカシノピカチュウ。ピカチュウのメンコが局地的に人気を博している馬だ。こういう馬にはつい肩入れしてしまうが、推奨理由はそれだけではない。前走は休み明けで距離も長かった。マイルに戻るここは期待大。馬券は、枠連で勝負するかもしれない。

 室町Sは、本来ならスリーボストンが抜けているのだろうが、休み明けで57 kgを背負う。人気も集中しそうだ。それなら◎ウインラーニッドを狙いたい。

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2013年10月16日水曜日

ボーリングに行ってきた(5歳、3歳の子どもを連れて)

 何を隠そう、わが家のお隣さんはボーリング屋さんである。もう少し正確に言えば、わがマンションの隣は商業ビルであり、パチンコ、カラオケ、ゲーセンなどとともにボーリング場が併設されているのだ。
 私はボーリングはけっこう好きなので、以前から行きたいと思っていたのだが、子どもが小さいためなかなか行けなかった。しかし子どもも大きくなり、そろそろ大丈夫だろうというわけで、先月の終わりにデビューした。

 最近のボーリング場には、ボールを転がせない子どものために、すべり台のようなものが用意してある。


頂点にボールをセットして「ドンッ」と押して転がすのだ。こんな感じで「さあ行け~」と、ボールを押し転がす。これなら小さい子どもでも楽しめる。


 これに気をよくしたのか、1カ月ほど後に
「また行きたい」
と言い出したので、調子に乗って2回目のボーリングに。1回目は弟(3歳)が優勢だったのだが、2回目は姉(もうすぐ6歳)のほうが調子がよかった。初めてスペアをとり、大喜び。


 ファミリーパックというセットがあり、大人一人と子ども一人が2ゲームずつ投げて1300円。これはお得だ。
 また行こう。早く、すべり台を使わずに自分で転がせるようになるといいね。



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2013年10月15日火曜日

書評 小川洋子『原稿零枚日記』(集英社文庫)

 現実と虚構、この世とあの世の境目を、プラプラ散歩した気分にさせてくれる小説。小川ワールド全開。

 書名から、小川氏の執筆活動をネタにしたエッセイ集だと思っていたが、全く違った。
 ある作家の日記という形で、さまざまな出来事が描かれる。取材で訪れた地で食べた苔料理、子ども時代に住んでいた家の話、「あらすじ教室」の講師をしたときの様子、妙ちくりんな健康スパランドでの体験などなど、独立しているようでいながら、一部がリンクしているような小話が収められている。
 (おそらく)小川氏の実体験を出発点にしているのだが、読み進めるうちに、読者はいつの間にか虚構の世界へと誘われる。どこまでが現実で、どこからが虚構なのか。あまりにも自然な成りゆきに、いつ現実の境界線を踏み越えてしまったのか気がつかないが、終わってみれば、小川ワールドにどっぷりと浸っているのだ。

 読み終えて現実世界に戻ってくると「ただいま」と言いたくなる。ちょっと変わった夢を見た後のような読後感の小説だった。



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【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...