2012年7月29日日曜日

書評 城福浩『Jリーグサッカー監督プロフェッショナルの思考法』(カンゼン)

 J2のヴァンフォーレ甲府の「現」監督である城福さんが、サッカーに対する考え方を一冊の本にまとめたもの。
 何を隠そう私はサッカーよりも野球派なのだが、とても悔しい。何が悔しいって、なぜサッカーにはこんな本があって、野球にはないのか。現役の監督が戦術やチーム運営について、実在の選手やチーム名を出しながら語った本など、日本では前代未聞だろう。野球好きの私にも、存分に楽しめた。サッカーファンには垂涎の一冊だ。

 本書は以下の6章で構成されている。

Chapter 1 チーム編成論(どのような選手を集めるか)
Chapter 2 マネジメント論(チーム運営)
Chapter 3 采配論(メンバー選びと試合中の采配)
Chapter 4 戦術論(チーム戦術)
Chapter 5 システム論(サッカーのフォーメーションについて)
Chapter 6 育成論(特に若手の選手育成)

 1~3と6は、サッカー以外にも応用できるな考え方が多く、管理職などの人には指導者論としておおいに参考になるだろう。
 私が感じたのは「ぶれない」ことの大切さだ。明確な基準(城福さんはこれを「スタンダード」と呼んでいる)を決め、それをいかに徹底するかがチーム運営のキモだと述べている。ベテランの中心選手だろうと、実績のない若手選手だろうと、例外にしない。指導者にとって、この「ぶれなさ」がいかに大切か、本書を読めばよく分かる。

 4と5はサッカーファンにはたまらない部分だろう。現役の監督が、バルサやレアルも例に取り、流行の戦術やシステムを論じた内容には、私もワクワクした。左利きの中村俊輔がなぜ右サイドに使われるのか、なるほどよく分かった。

 本書は、城福さんが2010年にFC東京の監督を辞めて(解任されて)、1年間の浪人生活を送った2011年にコラムやメルマガに書いた文章をまとめ直したものだそうだ。しかし、寄せ集め感はなく、理路整然と構成されており、とてもよくまとまっている。コラムやメルマガも、いかにぶれずに書かれていたかの証明でもあるだろう。

「サッカーの戦術とかシステムの知識がもう少しあれば、もっと楽しめたのに」
ということだけが残念な一冊だった。
 プロ野球の現役監督も、誰かこんな本を書いてくれんかなあ。(今年は低迷してるけど)岡田監督あたり、いかがですか。




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