2014年2月27日木曜日

書評 首藤瓜於『脳男』(講談社文庫)

インパクトのある書名も、読んで納得。なるほど「脳男」だ。


 連続爆弾事件の犯人を追い詰めた現場には、もう一人の男(鈴木一郎)がいた。犯人は逃げ去り、鈴木だけが逮捕される。精神科医が鈴木の精神鑑定を重ねていくにつれ、驚くべき事実が発覚する。鈴木には「感情がない」のだ。
 鈴木の生い立ちが明らかになっていくにつれ、鈴木の本性が徐々に見えてくる。感情のない人間、すなわち「脳男」とはどういう存在なのか。さらに、鈴木は爆弾犯の共犯なのか、それとも犯人の敵なのか。謎が謎を呼ぶ。そこに新たな爆弾事件が発生じ、ハラハラドキドキのラストへ。

 というのが粗筋。最初は「脳」男が「悩」男に見えて、悶える男みたいなのを想像していたのだが、全然違った(……)。
 感情がない脳は情報を受動的に入出力するだけで能動的な行動を一切起こさない、という設定が面白い。読んでなるほど、鈴木はたしかに「脳男」だ。このインパクトのある書名も、人気の大きな要因の一つだろう。
 鈴木はあのときなぜああいう行動をとったのかなど、残っている謎もあり、続編が気になるように書かれているのもニクい。

 感情がなければ困るだろうが、一方で私の煩悩だらけの脳にも困ったものだ。少し脳男を見習いたい。



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