2017年6月26日月曜日

【書評】橘玲『タックスヘイブン』(幻冬舎文庫)

小説として面白すぎるのが玉にきず?


 『マネーロンダリング』に続く、橘氏の金融小説第2弾。タックスヘイブンは直訳すると「税金天国」だが、租税回避地と訳されることが多い。平たく言えば、どれだけ収入があってもほとんど課税されない国や地域のことだ。税金が給料から天引きされる、われわれ日本人サラリーマンには縁がないが、億単位の収入がある個人や企業がこれを利用しないはずがない。また、本作品でも出てくるように、裏金の洗浄にもかかわっているようだ。

 前作の『マネーロンダリング』から12年が経ち、世界の金融ルールが劇的に変化したことがよく分かる。アメリカをはじめとする国や地域が、タックスヘイブンへの圧力を大幅に強めているのだ。
 そのような時代に、裏金や灰色の資金をどのように隠すのか。また、タックスヘイブンを使って合法的に節税する方法はあるのか。こんな金融ノウハウが小説の形で披露される。
 とはいえ本書に登場するノウハウは、2017年現在の金融業界ではすでに時代遅れになっているのだろう。それほど変化は早い。

 あえて難癖をつけるなら、小説のストーリーが面白すぎて、金融ノウハウが頭に入ってこないことか。それくらい小説としての完成度も高い。
「リーマンショックやパナマ文書に興味はあるけど、経済の本を読むのはしんどいなあ」という人にはおすすめの一冊。

《あらすじ》
 主人公は古波蔵というフリーの金融マン。その旧友である紫帆の夫(北川)がシンガポールで謎の死を遂げた。北川はいったい何者で、どうやって巨額の収入を得ていたのか。
 日本のヤクザや政治家の巨額資金が突然消失。シンガポールのプライベートバンクが資金のやりとりの舞台となったようだ。北川はピエロに過ぎないことは明らかだ。その背後ですべてを操る黒幕はいったい誰なのか。



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