2012年3月6日火曜日

書評 吉福康郎『格闘技の科学 力学と解剖学で技を分析!』サイエンス・アイ新書

 中部大学工学部教授であり、スポーツ・バイオメカニクスと生命情報科学を専門とする吉福さんが、さまざまな格闘技の技を科学的に解析・解説した本。

 ムエタイの蹴り、柔道の投げ技・関節技、空手の突き・蹴り、相撲力士の強さの秘密、合気道や太極拳の「気」などを科学的に解説。ボクシング、K-1、柔道、相撲などの格闘技系スポーツが好きな人にとって、目から鱗の知識が満載だ。何となく「おお、すげぇ」と見ていたシーンが
「なるほど、こういう理屈で効いているのか」
と見えるようになるだろう。
 そういう意味では、実際に格闘技を練習している人が読むと、さらに面白く感じられるに違いない。
 また、技の説明と並行して、それぞれの格闘技の強み・弱みが語られているのが興味深い。異種格闘技線がなかなか成立しない理由もよく分かる。いったい、最強の格闘技はどの競技なのだろうか。それは本書を読んでのお楽しみ。

 それぞれのトピックは読みきりで説明されていて、どこからでも読める。また、各トピックには必ずイラストがついていて、理解を助けている。イラストも上手で、技がよく分かるように描かれている(しかし、イラストにはなぜか女性がよく登場し、かつ妙にエロっぽく見えるのは私だけだろうか…)。

 しかし、私が特に興味深かったのは、技の解説をしたトピックではない。Q70「体力がないせいかなかなか強くなれない……。どうしたらよい?」という項目だった。
 本書によると、この問いに対する回答は「ある意味、どうしようもない」という身も蓋もないものなのだが、逆にいうと、厳しい練習に耐えられる強い体(と精神)を持った者しか強くなれないということだ。それが才能なのだろう。

 私の格闘技歴はというと、小学生のときに数年間、空手をやっていた。やめてから30年近く経つこともあり、今では特に腕っ節に自信があるわけでもないのだが、今に至るまでヤンキーに絡まれたり、オヤジ狩りにあったりしたことがないのは、空手で培ったもののお陰なのかもしれないと、本書を読んで思った。
 息子が大きくなったら、一緒になにか習いに行ってみようかなあ。



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