2012年12月19日水曜日

書評 ケリー・マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)

 もうあと10日ほどで年も変わるが、年の初めに、ダイエット、禁煙、脱浪費癖、禁酒、脱ギャンブルなどなど、「今年の目標」を立てる人も多いだろう。しかし
「そういえば去年も一昨年も、いつの間にかうやむやになって、目標達成できなかったな…」
という人がほとんどかもしれない。そんなあなたに、ぜひともお勧めしたいのが本書。今日から1日1章ずつ読んでいけば、年の初めにちょど間に合う。
「一冊の本を読んだだけで禁煙できれば苦労しないよね」
「ダイエット本がこんなに何冊もある(しかも売れてる)のは、結局、本を読んでもダイエットできないからでは?」
と、この手の本に懐疑的な人にこそ手にとってもらいたい。何を隠そう、私もこの手の本には懐疑的だからだ(そんなヤツが献本を申し込むな、という話もありますが…)。

 スタンフォード大学で行われている人気講義を10章にまとめたのが本書。1章が一回分の講義に対応しており、それぞれの章のテーマが明確で、非常に読みやすい。
 本書のテーマは「意志力(willpower)」。すなわち、自分のやりたいことを実行するための力について書かれている。
 第1章では「意志力というものが実際にあり、それを自分がどのように使っているか」が語られる。まずは意志力というものの存在をしっかり認識しようということだ。本書の土台となる内容である。
 続く第2、3章が本書のキモである。この二つの章では、意志力はどういうときに落ちてしまうか、またどのようにして「増すことができるか」が述べられる。意志力の存在を知った後は、その力を伸ばしていこうというわけだ。意志力を筋肉にたとえる記述がとてもわかりやすい。意志力も筋肉と同じように、使わないと衰えていく。かといって過度に負荷をかけると故障してしまう。だから、適切な負荷をかけてトレーニングしていく必要があるというのだ。なるほど納得である。
 そして第4章以降では「意志力の仕組み」がさまざまな角度から書かれている。なぜ望みたくないことをやってしまうのか、どういうときに負けてしまうのかなどなど「失敗するときの仕組み」が最新の心理学や脳科学の研究も参照しつつ説明される。また、それらに対処する方法も示されるので、how toとしても役に立つ。

 お勧めの読み方は、1日に1章を読み、次の日にそれを実行することだ。一気にたくさん読んでも実行できなければ意味がない。1章分の教えを着実に実行するのがよいと思う。また、実行する目標は一つに絞ることを勧める。限りある意志力を、ひとつの目標に向けるのがよいだろう。私はこの方法で、最近ちょっと増えつつあったタバコが半分に減った。

 勉強になったのは、意志力は気合次第で無限に湧き出てくるものではないということだ。
「意志の力というのは気力・気合の問題であり、振り絞れば出てくる。それが出ないのは気合が足りんからだ」
というのはイメージにすぎないのだ。
 もって生まれる筋肉の量が違うように、意志力もたくさん持っている人(意志の強い人)と持っていない人(意志の弱い人)がいる。しかし、意思が弱いからといってあきらめる必要はない。筋肉を鍛えられるのと同様、意志力も鍛えて増やすことができるのだ。そのための方法がその理由とともに書かれているのが本書である。
「来年こそ目標を達成したい」
と思っている人は、今が本書を読み始める絶好の時期だ。




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