2014年10月29日水曜日

書評 朝井まかて『先生のお庭番』(徳間文庫)

ほんわか人情小説と思わせておいて…。ニクい。


 舞台は江戸時代の長崎、出島。鎖国の世にあって、外国人の活動が許された人工島だ。タイトルの「先生」とはシーボルトのこと。そのシーボルトの館の庭師として仕えることになった熊吉が主人公である。

 物語はシーボルトと熊吉の出会いから始まる。下働きとして恵まれない生活を送っていた熊吉が、気むずかしくも優しいシーボルトと、遊女上がりの奥方と出会い、関係を紡いでゆく。
 ビクビクしつつも懸命に働き、「先生」や奥方に認められ、人生を切り開く熊吉。出島の人たちと熊吉の暖かい交流の様子に心が和む。
「なるほど、ほんわかした、よい話だなあ」
と浸っていたのだが、後半は一転、怒濤のような展開に。あれよあれよという間に読み終えてしまった。朝井氏の小説は初めてだったこともあり、見事にしてやられた。

 とはいえその本質は人情小説であることに変わりはない。人情とは、ほんわかしたものだけではない、ということなのかもしれない。



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