2016年2月3日水曜日

【書評】R. A. ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』(ハヤカワ文庫)

近くて遠い月。その距離感を絶妙に表現したSFの名作


 地球に対して反乱革命を起こす月世界人たちの物語。なぜ(why)、どのようにして(how)革命を成し遂げるのか。そのリアリティがストーリーを支える。
 核家族的父系社会、自由主義など、現代社会では当然とされている価値観が揺さぶられる。SF(サイエンスフィクション)、さらに言うならフィクションの真骨頂がここにあるのだ。
 ハインラインは、21世紀がどのような社会になるか分かっていたのだろうか。1960年代に書かれたとは信じられない。21世紀になってから書かれた小説だと言われても信じてしまいそうだ。
 ただ、訳文は60年代の雰囲気が残っており、そこが少し残念。新訳が出てほしいところだ。

【粗筋】
 時は21世紀後半。月には犯罪者が送られ、看守の不要な牢獄となった。その牢獄で生まれ育った月世界人が、地球に対して反乱革命を企てる。
 鍵となるのはコンピューター。月世界のすべてを担う巨大コンピューターであるマイクは、いつしか自我を持つようになった。マイクも同志として革命を成し遂げようとする月世界人たち。地球への反乱の結末やいかに。




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