まず、やっぱり楽しい。NPBのトップ選手が一緒のチームで戦うのも新鮮だし、一発勝負のトーナメントもリーグ戦とは違った緊張感がある。
現時点では問題点もたくさんあるようだが、大きな大会に育ってもらいたいものだ。
内川の走塁ミスは「敗因」だったのか?
プエルトリコに負けた試合での、内川選手の走塁ミスが「敗因」であったかのように報じられている。しかし、あれは決して「敗因」ではない。強いて言うなら「負けが決まった瞬間」だ。あの瞬間に負けが決まった、と言うことはできるだろう。しかし、それは「敗因」とは別物だ。
では敗因は何だったのか。敗因は、打てなかったことに尽きる。7回まで0点で勝とうというのがムシが良すぎる。序盤のチャンスに点を取れなかったことが敗因だ。内川選手のあのプレーは確かに走塁ミスだが、それを敗因として捉えるのは間違っている。
また、盗塁のサイン自体についても、一発勝負のトーナメントなんだから、おおいにあり得る作戦だった、と私は思う。それに、台湾戦の鳥谷の盗塁は批判せず、結果的に失敗に終わったこちらだけをあげつらうのはおかしい。
采配ミスは別の場面だった
采配ミスは別の試合にあったと思う。それは、二次ラウンドの台湾戦。今大会で最も熱かった試合だ。その8回裏の台湾の攻撃の場面。
0-2のビハインドの6回裏から登板した田中投手が、6、7回の2イニングをパーフェクトに押さえた。打者6人から4三振を奪う、完璧な内容だった。そして8回表に日本が2点を取り同点に追いつき、迎えた8回裏。
田中が先頭打者、次の打者に連打をあび、無死一・二塁のピンチ。ここで采配ミスがあったと思う。結果的に、田中はここで勝ち越しのタイムリーを打たれ、マウンドを降りるのだが、結果論ではなく、ここは投手を替えるべきだった。
終盤の8回で2-2の同点。バッターは左打者。ここで森福を使わずに、何のために森福をベンチに入れているのか。ここは、森福への交代の一手だった。
大会後に突如わき出た首脳陣批判
日本チームの結果は、ご存じの通り、ベスト4敗退。最低限の目標は達成したと言ってよいだろう。
しかし敗退が決まるやいなや、采配その他について、マスコミによる首脳陣への批判が噴出した。大会中は(申し合わせでもあったのか)表に出てこなかった批判が一斉にわき出てきたのだ。特にコテンパンに叩かれたのが東尾コーチだった。私も当初から、投手総合コーチが東尾氏というのは疑問だった。
しかし、大会が終わってから「待ってました」とばかりにマスコミが批判し始めるのには違和感がある。娘と一緒にイベントに出るのを怪しからんと思うなら、大会中であろうと、その時点でしっかり批判してほしかった。
首脳陣の功績 その1
敗退が決まると、上記に加えて、「練習している選手がいるのに映画や競艇に行っていた」とか「毎晩、酒盛りをしていた」とか、おおいに批判されている今大会の首脳陣だが、功績もあったと思う。
それはメンバー選考についてだ。
一つ目は、事前の予想を覆して角中と本多を残し、大島と聖沢を選ばなかったこと。この決定の直後には疑問の声が上がったし、私も「足のスペシャリスト」を選ばなかったことに疑問を感じた。
しかし、大会を通じて
「大島か聖沢がいたらなあ」
と思う場面があっただろうか。今大会のメンバーは、走攻守兼備の選手が多く、代走があるとすれば、どうしても1点がほしいときに阿部に代走を出すという場面だけだっただろう。それを見越して、足のスペシャリストよりも打力を優先した人選はヒットだったのではないか。
ただ、せっかく残した本多がほとんど使われなかったのは残念だった。2塁の守備固めとして使う手はあったように思うのだが。
首脳陣の功績 その2
二つ目は中田翔選手を選んだことだ。中田を選ぶことに否定的なコーチもいたようだが、山本監督の一存で選んだのだという。
結果的には、中田はレギュラーとして活躍した。本人にとっては、またとない経験になっただろう。首脳陣にはおおいに感謝してほしい。奔放な中田については批判の声も多いが、今回の経験をどう生かすのか、注目していきたい。
また、お目付役の稲葉選手を、ちゃんとメンバーに入れていたところも見逃せない。
以上、感じたところをザッと書いてみた。いまから次回が楽しみだ。
日本代表を常設するなら、サッカーのように外国人を監督に呼んでみてはどうだろうか。サッカーと同様に、長期間、腰を据えて指揮できる環境を整えれば、アッと驚くような人選など、日本球界に新しい風を吹き込んでくれるように思う。
ヒルマン氏とかマニエル氏(現フィリーズ監督、元近鉄)なんかどうですかね。不動の三塁手モッカ氏(元アスレチックス、ブルワーズ監督、元中日)もいいなあ。