2014年10月27日月曜日

書評 小川一水『コロロギ岳から木星トロヤへ』(早川書房)

SFとしての舞台設定が秀逸。SFの入門書にお勧め。


「まさにSF」であり、かつ「SFに慣れていない人にも読みやすい」。この両立不可能と思える二つのことが実現されている小説だ。
 SFというからには、まずSF的な舞台・世界を設定する必要がある。「宇宙人が来た」なんてのが分かりやすい例だ。この舞台設定で、その作品の面白さの大半が決まってしまうと言ってもよいかもしれない。設定された舞台に入り込めないSFほど、読んで苦痛な本はないだろう。

 小川氏の小説は『太陽の簒奪者』に続いて二作目だったのだが、両作品とも舞台設定はSFの王道である。「宇宙から未知の生物がやってくる」というのが、その共通点だ。まさにSF的な舞台設定であるといえよう。
 SFに馴染めない人は
「そんな、あり得ない舞台を設定されてもねえ…」
という拒否反応を示すのだろうが、小川氏の手にかかると、そういう舞台についつい入り込んでしまう。ラノベ的な要素も持った軽い語り口で、スルスルと読めてしまうのだ。

 ソフトに読めるハードSFとでも言えばよいのだろうか。いまの時代にとてもよくマッチした書き手である。SFの世界への入り口に、ぜひお勧めしたい作家であり作品。

追記:『太陽の簒奪者』は小川氏ではなく野尻抱介氏の著作でした。すみません。小川氏の作品は『第六大陸』に続く二作目でした。記憶力の低下を激しく感じます…。




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2014年10月26日日曜日

【予想の回顧】菊花賞、富士S、室町S(2014)

 今週は菊花賞。
 本命◎ワンアンドオンリーは少し押して好位を取りに行った。それほどかかっているようには見えなかったので、シメシメの展開だ。そのまま最終4コーナーまではジッと我慢して、直線入り口まで持ったまま。「勝った」と確信したのだが、いざ追い出すとジリジリになり、最後は馬群に飲み込まれて9着。外枠があだになり力んだのか、それとも距離の壁か。ノリ騎手はうまく乗ったように見えたのだが…。
 勝ったのはトーホウジャッカル。デビューからの最短日数での菊花賞勝利となった。2着にサウンズオブアースが入り、内枠の2頭が上位を占めた。トーホウジャッカルには、菊花賞馬としてぜひ今後も強い競馬を見せてほしい。

 土曜は東京で富士S。
 本命◎ブレイズアトレイルは後方から。レースは前半3ハロンが35.6秒のスローペースになったわりには差しが決まったのだが、この馬の出番はなかった。展開は向いたように見えたのだが、どうしたのだろう。
 勝ったのは3歳馬のステファノス。今年の3歳馬はレベルが高いかもしれない。

 京都の室町Sは◎エイシンゴージャスが軽快に逃げたが直線入り口ではすでに手応えが怪しく、11着に惨敗。

 今週は3戦3敗で本命馬がすべて惨敗。ここまで大ハズレだと諦めもつくような、散々の結果だった。

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2014年10月25日土曜日

【予想と与太話】菊花賞(2014)~荒れる時代は終わった~

 いよいよ今週は菊花賞。京都の誇る二大長距離GIレースの一つだ。ダービーや有馬記念も盛り上がるが、関西在住の私としては、天皇賞・春とともに大好きなレースである。

 JRAのCMで取り上げられたのはマンハッタンカフェ。夏の登り馬でセントライト記念4着から菊花賞を制した。2着に逃げた人気薄のマイネルデスポットが残り、大荒れの結果となったのだった。この頃から、菊花賞が荒れ出したのだと思う。
 また、セントライト記念をステップに菊花賞を勝ったのは、この馬が最後らしい。今年のセントライト記念組はどうだろうか。

 レースにいってみたい。
 ダービー馬の◎ワンアンドオンリーが抜けた人気になりそうだが、皐月賞馬不在、これといった登り馬もいないとなれば、それも納得。ここ4年連続で1番人気馬が連対し、ここ3年は神戸新聞杯優勝馬が1番人気となって本番も制している。荒れる菊花賞の時代は終わったと解釈したい。この馬が本命。
 となると相手は絞りたい。ダービーで掲示板を外した馬は消す。怖い馬もいるが、仕方がない。というわけで内から順にトーホウジャッカル、ゴールドアクター、タガノグランパ、トゥザワールドを押さえる。推奨穴馬には、この中からタガノグランパを推しておく。ダービー4着、(今年はハイレベルだったかもしれない)セントライト記念3着のわりには人気がない。
 8枠に入った神戸新聞杯4、5着馬がちょっと怖い。

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2014年10月24日金曜日

【予想と与太話】富士S、室町S(2014)~いつも人気の盲点~

 朝晩は肌寒いくらいで、もうすっかり秋だ。息子は本日、秋の遠足で動物園に行ったらしい。

 そんな土曜は東京で富士Sが、京都で室町Sが行われる。
 室町Sの室町は、室町時代の室町なのか、それとも室町通りの室町なのか。ふと疑問に思ったので、いつものようにJRAの特別レース名解説に教えてもらった。

室町は、京都市中央部を南北に通じる通り。北は北山通から南は久世橋通までを指す。三条通りとの交差点付近は交通の便がよく、西陣にも近いことから繊維問屋が集中している。今出川通の北側には、「花の御所」と呼ばれた室町幕府が置かれた。

ということで、正解は室町通りの室町だった。烏丸Sや北大路特別と同じ、京都の通りの名前シリーズの一つだったらしい。
 十数年前、2年間ほど室町通り沿いに住んでいたことがある。昔ほどではないのだろうが、それでも呉服屋さんがたくさんあった。JRAの解説にもあるように、繊維関連の店が連なる通りなのだ。とはいえ、それらのお店には一度もお世話になったことはない。そりゃ、和服屋が少なくなっていくわけだ…。

 レースにいってみたい。
 ダートオープン特別のハンデ戦。古馬の牡馬と3歳牝馬の一騎打ちの様相。本命は3歳牝馬の◎エイシンゴージャス。ここまでの成績が4-1-0-0で、ダート1200 mは負けなしの4連勝中。昇級戦でもあり、ハンデは52 kgと恵まれた。ここは通過点。
 相手も人気だがナガラオリオンは押さえざるをえないか。
 推奨穴馬はサマリーズ。走るときと走らないときが極端な馬。前走は度外視できる。

 富士Sは◎ブレイズアトレイルが本命。前走でお世話になったこの馬を引き続き本命に推す。何度好走しても人気にならない馬がたまにいるが、この馬がまさにそれ。

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2014年10月23日木曜日

書評 マイケル・サンデル『これから「正義」の話をしよう』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

「白熱教室」がなぜ人気なのか。さらに知りたくなった。


 数年前に話題になった「白熱教室」のマイケル・サンデル先生。そのサンデル氏が自らの考えを綴ったのが本書。あの「白熱教室」の根底にある考え方が披露されているのだろうと、おおいに期待して読んだのだが…ちょっと期待はずれだった。

 本書では、サンデル氏の「道徳」に対する考えが述べられている。何をもって「正義」とするべきなのかが書かれている。
 たとえば、サンデル氏はこんな問いを投げかける。
「ここであなたが人を突き飛ばして電車を止めたら、大勢の命が救われるとする。さてあなたは、その人を突き飛ばすべきなのか」
こういう状況で、人を突き飛ばすのが正義なのか、それとも突き飛ばさないのが正義なのか。こんな感じで問いを立てつつ「正義」についての考察を深めていく。

 このように書くと、とても興味深いし、実際に「白熱教室」は非常にエキサイティングなのだろうが、本書ではその興奮を感じ取ることができなかった。
 まず、難しいのだ。原文が難しいのか、それとも訳文がよくないのかは判断できないが、とにかく内容が頭に入ってこない。私がこの分野(道徳、哲学)に疎いことを差し引いても、十分に難しいと思う。「難解」というよりも「分かりにくい」のだ。

 テレビで白熱教室を見てから本書を読んだらまた違う感想をもったのかもしれないなあ。サンデル氏の考えを知るのに、まず本書から始めるのはお勧めできない。
 書くことが得意な人と、話す(講義)のが得意な人がいるということなのかもしれない。




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2014年10月19日日曜日

【予想の回顧】秋華賞、府中牝馬S、清水S(2014)

 今週は秋華賞。
 レースは大きく二つの集団に分かれ、後方集団の先頭から順にショウナンパンドラ、対抗の○タガノエトワール、本命の◎ヌーヴォレコルトと並ぶ。この3頭のうち、ショウナンパンドラは内を突き、他の2頭は外を選択。
 レースは直線へ。ショウナンパンドラが内からスルスルと抜け出す。タガノエトワールは外をスムーズに追い上げる。ヌーヴォレコルトはそれにフタをされるかたちで、一瞬待たされた。これが最後に響いたのか、タガノエトワールはかわしたが、ショウナンパンドラを捉まえることはできず、2着まで。実力は示したといえるだろう。
 勝ったのは内を抜けたショウナンパンドラ。フサイチパンドラに続き、2頭目(たぶん)のパンドラGI牝馬になった。勝つときはこんなもんだろう。中団から最内に進路をとって、スイスイと馬群を抜けてきた。ちょっとうまくいきすぎた感があるので、本物かどうかは微妙。次走に注目したい。
 馬券は、ショウナンパンドラを押さえておらず、ハズレ。

 土曜は東京で府中牝馬S。
 本命の◎ウリウリは好発から下げて中団の前につけ、最内をついた。いったんは抜け出しそうな気配だったので「よし」と思ったのだが、ラスト200 mで失速し、9着。差し馬の展開になってしまった。距離も少し長いかもしれない。

 清水Sは◎マルタカシクレノンが想定通り2番手につけたが、直線は後退する一方で、9着に惨敗。このクラスでは厳しいのだろうか。

 今週は3戦0勝。GIシーズンの初戦で躓いた。

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2014年10月18日土曜日

【予想と与太話】秋華賞(2014)~一本かぶりだが~

 なぜか今週から福島がスタートし、三場開催となっている。なぜ京都・東京開催の2週目からスタートするのだろうか。中途半端やなあ…。

 そんな日曜は京都で秋華賞が行われる。いよいよ本格的なGIシーズンの始まりだ。
 秋華賞は女王杯の古馬開放に伴ってできたレースで、比較的新しいGIである…と思っていたら今年で19回目。どこが新しいねん。
 秋華賞といえば思い出すのがブゼンキャンドル。1999年だから、第4回のこのレースのチャンピオンだ。12番人気の低評価を覆し、これまた人気薄のクロックワークと2頭で怒濤の追い込みを見せた。印象に残るGIレースの一つである。
 このときやブラックエンブレムの印象が強いので「荒れるレース」という印象があるのだが、たいがいの年は堅く収まっている。春の実績馬が結果を出しているのだ。

 レースにいってみたい。
 桜花賞馬が不在、2歳女王は前走で凡走。となれば前哨戦を制したオークス馬、◎ヌーヴォレコルトが一本かぶりの人気になるのも仕方がない。ハープスターが欠席しているためか「押し出された人気馬」のように見えてしまうが、この馬の実力も相当なもの。無理に逆らう必要はなかろう。この馬が本命。
 となれば、相手は絞りたい。相手筆頭はタガノエトワール。未勝利を勝った直後のローズSでヌーヴォレコルトの2着に差してきた。1勝馬が結果が出ていないのは承知だが、このメンバーなら。
 もう一頭、狙ってみたいのがバウンスシャッセ。オークスではヌーヴォレコルト、ハープスターから0.1秒差の3着だった馬だ。ここ2走は古馬の牡馬相手の洋芝と、不良馬場でのレース。度外視したい。この馬を推奨穴馬とする。馬券はもう1、2頭押さえると思うが、それは明日に決める。
 レッドリヴェールは前走が不発だったのに、中間もビッシリとは追われていないようだ。上積みも少なそうなので評価を下げる。

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【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...