ある事柄を小説に落とし込む手法の完成形
2009年刊行の大ベストセラー『もしドラ』。社会現象となるほどの爆発的な売れ行きを示した。流行り物に懐疑的な(ひねくれ者の)私は
「ホンマにオモロイんかいな」
と半信半疑で手に取ったのだが……参りました。これはよくできている。
そのままで学ぶには難しい知識や概念などを、物語に落とし込んで小説風に仕立てあげることにより、分かりやすく伝えようとする試みは、これまで何度も行われてきた。その一つの完成形が本書であるといっても過言ではない。
まず、小説と事柄(ドラッカーの『マネジメント』)が非常にうまく絡み合っているのが本書の特長だ。高校野球の女子マネージャーが『マネジメント』を読み込んで実践することにより、野球部を強くしていくという設定には舌を巻いた。女子マネと『マネジメント』の組み合わせが、意外なだけでなく「効果的」なのだ。
また、ある事柄を小説仕立てで伝える手法は、事柄と小説のバランスが肝要だ。事柄のほうに傾きすぎると、何のために小説仕立てにしているのか分からない。一方、小説のほうに傾きすぎても、事柄が伝わらない。小説が面白すぎても、つまらなさすぎてもダメなのだ。本書は、この按配が絶妙なのである。小説のストーリーは素人っぽいが、そこがよいのだ。
ミリオンセラーも納得の、よく組み立てられた本だ。おそらく、編集者の寄与も大きかったのだろう。
本書で紹介されるドラッカーの考え方からも、さまざまなヒントを得た。最も印象に残ったのは、リーダーに必要な資質についてだった。ドラッカー曰く、リーダーに最も必要な資質は「真摯さ」なのだそうだ。知識や手法は後から学ぶこともできるが、真摯さや情熱を持たない人にそれを付け加えるのは無理だという。なるほどその通りだ。
というわけで、私はリーダーには不向きなことが改めて分かったのでした…。
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