2016年6月16日木曜日

【書評】是枝裕和・佐野晶『そして父になる』(宝島社文庫)

映画の行間を埋める小説。映画の背景が浮かび上がる



 是枝裕和監督、福山雅治主演の映画の小説版。映画の原作というわけではなく、まず映画があって、それを小説化したのが本作だ。
 映画の行間が埋まってゆく。いい換えれば、映画の背景事情が事細かに説明されていく。私は映画をすでに見ているので
「あのシーンにはこういう思いがあったのか」
「たしかにその場面ではこういう表情をしていた」
などなど、得心するところが多かった。

 それはそれですっきりしたのだが、「映画を説明するための小説」なので、記述が説明的すぎて、解釈の余地がないようにも思った。映画の余韻を残しておきたい人は読まないほうがよいかもしれないが、隅々まで納得したい人にはお勧めである。
 映画→小説の順に読むのがよいだろう。本作に限らないが、やはり「原作」のほうから先に攻めるのがよいように思う。

《粗筋》
 学歴、仕事、家庭など、すべてを手に入れてきた男が主人公。しかし病院の過失(取り違え)により、息子とは血がつながっていないという衝撃の事実が発覚する。
 親子とは、血のつながりなのか、それともともに過ごした時間なのか。どちらの「息子」を選べばよいのか。改めて「親子とは何なのか」を考えさせる名作。




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