2012年2月10日金曜日

書評 パトリック・ジュースキント『香水―ある人殺しの物語』(文春文庫)

 強烈な小説だった。胃袋が匂いで満たされ、夢にまで匂いが出てくるような話。

 舞台は18世紀のパリ。並外れた、異様な嗅覚をもつ男が主人公。その男の名はグルヌイユ。そのグルヌイユの一生を描いた話だ。

 あらゆる匂いをかぎ分け、またそれらを組み合わせて自由に匂いを作り出す能力をもつグルヌイユ。その一生は底辺から始まる。嗅覚という異能を用い、その底辺から徐々に這い上がっていく。そして自らの夢、いや欲望である「究極の匂い」を追い求める過程が、どぎつい内面の描写とともに語られる。
 そして、ついに究極の匂いにたどり着くグルヌイユ。ラストは
「なんだ、結局こう終わるのか」
と思わせておいて…というのが粗筋。

 18世紀のパリというと、革命の直前で華やかなイメージだが、実際は相当に悪臭の漂う街だったようだ。よく考えてみると、下水がないんだから当たり前だよなあ。グルヌイユはそのパリで生を受け、一生を終える。

 何が強烈って、グルヌイユの匂いを求める執念が強烈に描かれているところだ。それがグルヌイユの一人称ではなく、三人称で語られるところが、強烈さをさらに増強する。
 どんより重いが、かといって不快ではない小説。匂いの世界にどっぷり浸かって、トリップしてみたい方は、ぜひ手にとっていただきたい。



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