2012年2月21日火曜日

書評 東野圭吾『流星の絆』講談社文庫

 珍しく自ら購入した東野小説。買ってよかった。ボリュームはあるが一気に読める。

 兄、弟、妹の3兄弟(兄妹)の両親が惨殺される。悲嘆に暮れながらも、幼いながらも復讐を誓う3兄弟。
 そして舞台は十数年後に。成人した3兄弟は詐欺師となっていた。そんなとき、ある詐欺のターゲットの父親が、両親の仇であることが判明。その仇を警察に逮捕させるべく、3兄弟が知略を尽くす。

 と粗筋を書くと、なんだかとても暗い話に見えてしまうが、3兄弟の軽快で前向きなキャラクターのため、どことなく明るい雰囲気のストーリーに仕上がっている。「復讐」という重たく暗いテーマを軽快に描ききり、かといって軽薄にはなっていない。いつもながら、東野さんの筆力には脱帽である。
 犯人と父との関係の鍵を握るのが「ハヤシライス」だというのも憎い。高級フレンチのレシピだったり、秘伝のソースだったりではなく、ハヤシライスというメニューがキーになっているところが、この物語の何とも言えない暖かい雰囲気作りに一役買っている。家族の絆とハヤシライス。いい組み合わせだ。
 殺人、レシピの謎に、末妹の恋が絡まり、息をつかせない。600ページを超える大作だが、あっという間に読み終えてしまった。ラストは得意のどんでん返し。参りました。

 作品の内容とは関係ないことなのだが、一つ気に入らない点があった。それは「帯」だ。私が買った本(第4刷)の帯のオモテ面に
「兄貴、妹(あいつ)は本気だよ」
から始まる台詞がデカデカと印刷されているのだが、これはネタバレではないのか…。この台詞を知らずに読みたかったと思うのは私だけだろうか。ともかく、担当編集者がもしこの書評を読むことがあれば(ないやろうけど)、そういう読者もいるということを知って、帯や表4の紹介文では、極力ネタバレにならないような(かつ、その本の魅力を伝えるような)文章を練っていただきたい(難しいのは承知ですが)。

 ところで、本書を読んでいる間、私の頭の中ではある音楽がリフレインしていた。「流星の」で思い出す曲と言えば…そう、久保田利伸の、あの名曲である。
「○○の~ サドール イェイェイ」
 今もこの音楽が頭から離れない。どうにかしてくれ。



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