2012年2月14日火曜日

書評 綾辻行人『人形館の殺人〈新装改訂版〉』(講談社)

 綾辻さんの作品を初めて読んだ。『十角館の殺人』から読み始めたかったのだけど、ひょんな事情からこの『人形館』を最初に読むことになった。

 初の綾辻作品の感想をひと言で述べるなら
「いかにもミステリーらしいミステリー」
ということになるだろう。ホームズ、ルパン、ポワロなどの古典的(?)ミステリーを思い起こさせる雰囲気がある。これらの古典からミステリーに入った私など
「やっぱミステリーはこうでなくっちゃ」
と思ってしまう。

 舞台は京都市左京区。はっきりとは書かれていないが、北白川通りを東に入った住宅街が舞台である(天下一品の本店が近くにあったり、京都のラーメン街の周辺ですな。北パチってまだあるんやろか)
 そこにある「人形館」を相続し、そこに越してくることになった飛龍想一という男が主人公。定職はもたず、病弱な絵描きである。この男の一人称で物語は進む。

 人形館という、いかにもミステリーな舞台を設定し、そこへいかにもミステリーな住人を集め、物語は進む。命を狙われる想一。そしてついに起こる殺人。さて犯人の正体は…。
 というのが粗筋。
 結末にはアッと驚かされた。おそらく賛否両論あったであろうこの結末。ちなみに、私の意見は「否」だ。

 しかし、それはそれとしてストーリーは存分に楽しめた。昨今、ミステリーにも(ミステリーにこそ?)舞台設定やストーリー展開に「リアル」さが要求される風潮があるが、そればかりでは面白くない。本作のような「いかにもミステリー」なミステリーを求めている人は、私も含めてたくさんいることだろう。少年・少女時代に、ホームズやポワロをドキドキワクワクしながら読んだときの興奮を思い出したい方には、綾辻作品はお薦めである。



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