2014年10月16日木曜日

書評 東野圭吾『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』(集英社文庫)

『マスカレード・ホテル』を読んだら、さっそく続編も読みたくなって『マスカレード・イブ』も立て続けに購入してしまった。東野小説、恐るべし。


 東野氏の新シリーズ「マスカレード・シリーズ」は、ホテルを舞台にしたミステリーだ。「ホテル・コルテシア」という高級ホテルで起きる事件を、若きホテルウーマンである山岸尚美を主人公に描いている。
 ホテルにはさまざまな客がやってくるが、彼らはみな「仮面」を被っている。さまざまな客が仮面を被って繰り広げる物語が仮面舞踏会、すなわち「マスカレード」というわけなのだ。

 本書のジャンルは、もちろんミステリーだ。しかし本書は、事件の過程で出てくるホテルの裏事情を堪能するための小説である(独断)。とはいえ、ミステリーとしての謎解きや犯人捜しももちろん上質であるところが、さすが東野氏である。
 ストーリーの軸にはしっかりとミステリーを据えつつ、さまざまな客の「仮面の裏」が暴露される。他人の「秘密」を知ってしまったとき、恍惚感と軽い興奮を覚えるのは人間の性だろう。そんな「秘密知りたい欲」を刺激された。ワイドショーが好きな人はハマること間違いなし。好きではない人も、自分に「興味本位」な面があることが改めて分かるだろう。ちなみに、私は後者である。

 一作目の『マスカレード・ホテル』は長編で、ある事件の捜査のためにフロントに化ける刑事と、ホテルウーマンの山岸尚美が協同して事件に当たる。二作目の『マスカレード。イブ』は連作で、山岸尚美がかかわるホテル小話が二つ、ホテルとは関係ない新人刑事の話が一つ、そしてそれらが交わる中編『マスカレード・イブ』が収められている。
 私は、長編である『マスカレード・ホテル』に軍配を上げたい。

 ちょうど来週、出張でホテルに泊まる。周囲の客がどんな仮面を被っているのか、またスタッフたちがそれにどう対応するのか、妄想してしまいそうだ。とはいえ、私が泊まるホテルはホテル・コルテシアとは比べるべくもない安ホテルなのだが…。





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