2015年7月30日木曜日

【書評】東野圭吾『禁断の魔術』(文春文庫)

帯にある「ここに登場する湯川学は『シリーズ最高のガリレオ』だと断言しておきます」には同意なんだけど…。


『真夏の方程式』に続く、ガリレオ湯川長編第四弾。
 湯川が容疑者を追い詰める側ではなく、容疑者の側につく? 草薙や内海は、湯川を相手に回して勝ち目があるのか? ガリレオ湯川が容疑者の味方をするという意外な展開。今回も、科学を絡めつつ展開するストーリーを堪能した。

 今回のテーマは、大げさに言うなら「科学は善か悪か」だ。科学技術が現在の高度な文明を支えているのは自明だが、一方で核兵器や地雷をはじめ、科学の負の側面を挙げようと思えばいくらでも挙げられる。
 科学は善なのだろうか、悪なのだろうか。この点、湯川の主張は明確である。
「使う人がアホなら、悪になる」
というわけだ。その昔
「ベンチがアホやから野球できへん」
と言って引退したプロ野球投手がいたが
「使う人がアホやから、科学の研究なんてやってられへん」
というところだろうか。

 物足りなかった点をあげるとすれば、謎解きの要素が少なかったことか。ガリレオシリーズは、最後に謎解きとどんでん返しがあるというパターン(特に短編)だったのだが、本作には謎解きもどんでん返しもない。
 だんだん湯川のキャラクターが存在感を増してきて、本作はトリックを楽しむよりも、「湯川を楽しむ作品」だったような感じがする。ドラマとしては面白かったが、ミステリーとしてはちょっと物足りなかったかなあ。




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