2015年7月14日火曜日

【映画評】海街ダイアリー

まさに「海街」の「ダイアリー」


 親のいない家で暮らす三姉妹。大黒柱の長女(綾瀬はるか)は、しっかり者の看護士。次女(長澤まさみ)は、恋多きOL。いつもダメ男に引っかかってしまう。三女(夏帆)はスポーツ用品店でのんびり働くマイペースな末娘。
 そこへ、中学生の腹違いの妹(広瀬すず)が加わる。これがよくできた子で、お行儀がよく、スポーツも得意。すぐに友達もできる。しかしその優等生ぶりの裏には、溜め込んでいる思いがあった。
「自分はここにいていいの?」
という疑問。生まれてこの方、自分の居場所がなかったのだ。

 そんな四女が、三人の姉や友人に導かれつつ徐々に心を開き、海街の鎌倉に自分の本当の居場所を作っていく。その過程がていねいに、温かく描かれている。号泣シーンはないのだが、涙腺は緩みっぱなし。こういう感覚は初めてだ。
 そうなる理由の一つが、本作には「理不尽な壁」が出てこないことだろう。ほとんどあらゆるストーリーには、敵が出てきたり、大事な人が病気になったり、借金取りが現れたり、そういう「壁」が出現して、それを乗り越えていかねばならない。そのような「理不尽な壁」が本作には出てこないのだ。だから「ダイアリー」なのだ。だから心穏やかに、温かく四姉妹を見守ることができるのだ。
 かといってストーリーが平坦というわけではない。そこが原作マンガのよさであり、是枝監督の腕のよさなのだろう。あっという間の2時間だった。

 四姉妹ともいい味を出している。絶妙な配役だと思う。特に四女の広瀬すずの可愛いこと。しかし恋の対象としてではなく、娘を見るような目で見守ってしまう自分が少し悲しかった。

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