2016年8月26日金曜日

【書評】加藤周一『20世紀の自画像』(ちくま新書)

加藤周一氏の「戦後まとめサイト」的な本


 一貫して反戦と第9条護持を主張した戦後知識人の加藤氏。第1部はその加藤氏が、対談という形で1950~70年代を語る。「自らの戦後」をまとめたものと言えるだろう。相変わらず、主張が明確で読みやすい。美術や芸術にも造詣が深く、文化に絡めて歴史をとらえる加藤氏の主張は、柔らかでありながらも筋が通っている。
 第2部は成田龍一氏が、知識人としての加藤氏の活動をまとめたもの。戦後の日本における加藤氏の立ち位置と、加藤氏の思想の流れがよく分かった。しかし、まとめサイトが得てして
「なんで『まとめ』がこんなに長いねん」
となりがちなように、「あまりまとまっていないまとめ」になっているような気も。やはり加藤氏の思想を知りたいなら、まとめではなく、原典にあたるほうがよいようだ。

 成田氏も本書で述べているように、いまや「知識人」という言葉はほとんど死語になった。芸人やアイドルが情報番組の司会やコメンテーターを務めるなど、非専門家である「お茶の間代表」的なキャラが重宝される。
 小難しい言葉を使って、上から目線でものを語る知識人は不要だが、かといって非専門家が横行しすぎてはいないか。
「私はこれについて詳しくは知らないんですけど」
という枕詞は聞き飽きた。加藤氏が目指したという「非専門化の専門家」が今こそ求められている。



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