2017年2月13日月曜日

【書評】宮部みゆき『誰か Somebody』(文春文庫)

暖かい人物が暴く、冷たい事実


 杉村三郎シリーズ第一弾。大富豪の末娘と結婚した杉村が事件の謎を解く、というよりもさまざまな人の人生を掘り下げ、つなぎ合わせてゆく。杉村の、実にていねいな仕事ぶりが心地よい。ひとつひとつ、大事に進めてゆくのだ。だからさまざまな場所で、さまざまな人たちに暖かく迎えられる。
 しかし、杉村が明らかにしていく事実はかなりとげとげしい。人間社会の棘を表現するのは宮部氏の得意技。杉村の暖かさとの対比により、この棘の鋭さがますます強調される。宮部氏の小説には、いつもゾクッとさせられる。

「今回は宮部小説恒例の『胸くそ悪くなる極悪人』は出てこないのかなあ。ちょっと残念」
と思わせておいて、最後にぎゃふん。鮮やか。

《あらすじ》
 杉村の義父の運転手が自転車にぶつかられて死亡。その犯人を探る過程で、杉村は亡くなった運転手の娘二人とかかわることになる。彼女らの人生の原点をたどる過程と、自転車事故の犯人捜しが並行して進んでゆく。



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