2013年7月11日木曜日

書評 三宅博『虎のスコアラーが教える「プロ」の野球観戦術』(祥伝社黄金文庫)

 約25年間、阪神タイガースのスコアラーを務め、その後、北京オリンピック日本代表チームのスコアラーとして働いた三宅氏が、スコアラー的視点で、さまざまな角度から日本プロ野球を論じた本。
 抽象的な総論ではなく、具体的な個々の選手に対する論評がふんだんに述べられている。いまや日本のエースとなったマー君、マエケンはもちろん、阿部、内海、山口、長野、坂本といった原巨人の中心選手から、売り出し中の菊池雄星や武田翔太まで、さまざまな選手をスコアラーの目で評価する。彼らの活躍できる理由や、どこが変わったことによって一皮むけたかなどが、的確に論じられている。つい最近まで現場にいた三宅氏にしかできない分析だろう。野球好きの私にはたまらない一冊だった。

 また、それぞれの選手やチームについて、今年(2013年)のシーズンに活躍できるかどうか、簡単な予想もつけられていたりする。現段階(7月)での大当たりの一つは、楽天の躍進を予言しているところだ。パリーグの優勝の本命はソフトバンクであるとしつつ
「私は案外と楽天がダークホースだと睨んでいる」
とハッキリと書いている。その他の今シーズンの予想も当たっているものが多く、さすがである。
 かといって百発百中というわけにはいかず、肝心の阪神については
「今年は厳しい」
と書いているが、3位を大きく引き離して2位につけているのは周知の通りだ。三宅氏にとっては嬉しい誤算といったところか。

 ところで、本書に最もよく出てくる名前は、現役選手ではない。それはノムさん、そう元阪神監督の野村克也氏である。野村氏が阪神にもたらしたものがいかに大きく、革命的なものであったかが、そこかしこに書かれている。2003年に阪神が優勝したときの監督は星野氏だったが、その前の監督である野村氏の残したものがいかに大きかったかがよく分かる。
 そういえば、楽天も野村氏→星野氏という監督の流れだ。今年の楽天の躍進は、2003年の阪神と似た部分があるに違いない。

 阪神が(今年は頑張っているが)ダメになった原因、佑ちゃんが伸び悩んでいる理由など、まだまだ紹介したいことがたくさんあるのだが、あとは本書を読んでいただきたい。

「投げた、打った」を楽しむのも野球観戦の醍醐味の一つだが、もう一歩踏み込んだ「通」(オタクともいう)の観点から野球を見るには絶好のテキストである。




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2013年7月8日月曜日

書評 藤田伸二『騎手の一分―競馬界の真実』(講談社現代新書)

 日本ダービーを制したこともある一流騎手による、競馬業界暴露本。

 若くして日本ダービーを制し、有馬記念や天皇賞(春)などのビッグレースも勝っている藤田伸二。ここ数年、存在感がないなあと思っていたら、こんな暴露本を書いていたとは…。かなりやる気を失っているようだ。どうやら、近いうちに引退する腹を固めているらしい。

 そんな藤田騎手が、競馬界に対する問題提起、というよりも「うらみつらみ」に近いことを書き綴ったのが本書。なかでも本書のクライマックスは、騎手を実名で批判しているところだ。関西のトップジョッキー数名が、批判の対象になっている。
「おれは、○○(本文中では実名です)の乗り方は認めない」
「強い馬に乗せてもらっているから勝っているだけ」
など、刺激的な表現が見られる。これが本書の売れている要因だろう。
 馬券ファンは、当たるよりもハズれることのほうが多く、騎手には言いたいことがたくさんある。それを、ある意味ズバッと書いてくれた本書に人気が出るのも分かる。

 ただ、本書はおそらく口述筆記であり、本全体としての起承転結はあまりない。各トピックは(上記の騎手批判も含めて)とても面白いのだが、全体としては説得力に欠けるというか、主張に核がないというか
「いろいろ言いたいことがあるのはよく分かったけど、それでどうしたいの?」
というところが伝わってこない。おそらく藤田騎手には何か訴えたいことがあるのだろうが、それがうまくまとめられていないように思った。
 騎手を引退した暁には、ぜひ自らの手で一冊書いてはどうだろうか。
「おれは中卒だから、そんなことできねーよ」
などと言わずにチャレンジしてほしい。藤田騎手なら、きっといい線いくと思うけどなあ。何ならお手伝いしますよ(おいおい)。



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2013年7月7日日曜日

予想の回顧 2013 プロキオンS、七夕賞、豊明S

 プロキオンSは◎アドマイヤサガスが3番手につけた。中京のダートは前残りなので
「よしよし」
と思って見ていたのだが、直線では馬群に飲み込まれた。差し馬のレースになってしまっただけに、仕方のないところか。

 福島では七夕賞。◎ダコールは最後方から。4コーナーでは大外をブン回して伸びてきたが5着が精一杯。内が伸びる馬場で大外を回しては届かない。予想で、馬場状態をまったく考慮していなかった。

 土曜は豊明S。◎オリービンは先団の後ろと、思ったよりも前の位置取り。そこからビュッと伸びたが、同じような位置にいたプリムラブルガリスには切れ負け。斤量差の分だろう。しかし何とか2着を確保してくれたお陰で馬連をとった。20倍近くつけば十分。

 今週も、先週に引き続き、1勝。1勝のみというのは物足りないが、そこそこついた。最悪の状態からは脱しつつある気配だ。

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2013年7月6日土曜日

2013 プロキオンS、七夕賞 オレの予想を聞いてくれよ

 今週は中京でプロキオンステークス、福島で七夕賞が行われる。7月7日に七夕賞が行われるのは11年ぶりなのだそうだ。枠連の7-7は人気以上に売れるのだろう。
 馬名が7文字の馬が勝つとか、7番の馬が来るとか、いろいろ言われているようだが、私はその手のサインはまったく気にかけない。

 予想はプロキオンSを中心に。プロキオンは星の名前だが、どんな星かは昨年に解説したのでそちらをご覧いただきたい。
 今年は、好調な馬が集まった。重賞勝ち馬こそ少ないが、近走、オープン特別で好走している馬が揃った。好メンバーといってよいだろう。
 その中から、本命は◎アドマイヤサガス。前走は1番人気を裏切ったが、それでも0.3秒差の3着に残っている。なぜか人気を下げているここは狙い目だ。
 推奨穴馬はナガラオリオン。降級した前走の勝ちっぷりが強烈だった。流れが向けば。

 七夕賞は◎ダコール。56 kgは恵まれた印象。差しがきけば。

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七夕の願い事 5歳の娘と3歳の息子のお願いとは

 今週の日曜日は七夕。保育所に通っている娘(年長組、5歳)と息子(年少の一つ下、3歳)が、豪華に飾り付けをした竹を持って帰ってきた。

七夕、願い事、5歳、3歳

 失礼ながら
「また、こんなゴッツいもん持って帰ってきて…捨てるのもたいへんやし、ちょっとうっとうしいなあ…」
などと思っていたのだが、娘の願い事を見て、そんな思いは吹っ飛んだ。

七夕、願い事、5歳、娘、家族

 偉いぞ、わが娘。優しい子だ。
 娘が5歳になったときにも書いたのだが、娘の偉いところは、家族生活などの日常が大好きなところだ。ついつい隣の芝が青く見えて、日常に不満を感じてしまう私など、おおいいに見習わなければならない。
 こんな娘も、来春からは小学生だ。どんどん自立していくのだろう。頼もしいような、寂しいような…。
 裏には家族の絵が描いてある。

七夕、願い事、5歳、娘、絵

 なぜかお父さんがいないのが、少し気がかりだ…。

 ちなみに、3歳の息子の願い事はこちら。

七夕、願い事、3歳、男の子、ウィザード、鉄砲

 てっぽうと書くとちょっと可愛らしいが、要するに仮面ライダーウィザードの持っている銃がほしいらしい。
 たしか、昨年の願い事は
「小さいスイカがほしい」
だった。息子も、この1年で成長(?)したようだ。

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2013年7月5日金曜日

2013 豊明S、天の川S、五稜郭S オレの予想を聞いてくれよ

 今年も、はやくも半分が終わった。早いものだ。今年のここまでの馬券成績は史上最低の低空飛行だが、後半戦で巻き返したいところである。
 そんな7月最初の週末のメインレースは、中京、福島、函館ともに準オープンの芝のハンデ戦。なかなか珍しい。

 中京メインは豊明S。名古屋の隣に位置する豊明市がレース名になっている。私は不勉強にして豊明市のことはほとんど知らないので、グーグル先生に教えを請うた。すると、なんと中京競馬場は豊明市にあるというではないか。知りませなんだ。なるほど、豊明Sというレースはあって当然ということか。宝塚記念(阪神競馬場は宝塚市にある)がGIなのだから、重賞でもよいくらいかもしれない。

 このレース、ここ数年、施行条件がころころ変わっており、今年から芝1400 mとなった。中京競馬場が改装されて、いろいろな距離のレースができるようになったこともあるのだろう。
 本命は◎オリービン。追い込み脚質のためかなかなか勝ちきれないが、重賞やオープンでも再三好走してきた馬。降級のここでは力が違うと見た。58.5 kgでも。
 推奨穴馬はシゲルスダチ。57.5 kgは楽ではないが降級で一発がないか。

 天の川Sは思い切って、◎マーブルデイビーを抜擢。ハンデ差を生かしたい。五稜郭Sは◎ツルミプラチナム

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2013年7月1日月曜日

書評 トム・マクナブ『遙かなるセントラルパーク 米大陸横断ウルトラマラソン 上・下』(文春文庫)

「ニューヨークへ行きたいか~っ!」
 その昔、そんな番組があった。当時小学生だった私は、放送を心待ちにしていたものだ。
 本書は、それよりもさらに約半世紀前の1931年を舞台に、アメリカ大陸をマラソンで横断するという実在の大会をベースに、その模様をドラマ化したもの。主要登場人物のうちの何名かは実在の人物なのだそうだ。
 冒頭に書いた「アメリカ横断ウルトラクイズ」も、勝ち抜きクイズ大会としての面白さはもちろんあったが、「人間ドラマ」をうまく織り交ぜたところが人気の秘訣だった。本書はそのマラソン版と思ってもらえればよいだろう。いや、「ウルトラクイズ」のほうが本書のクイズ版だ、というほうが順序としては正しいか。

 熱砂の砂漠地帯から、米大陸を東西に隔てるロッキー山脈まで、ランナーたちはさまざまな難関をくぐり抜けねばならない。
 1931年といえば、二つの大戦の間の時代。テレビもまだなく、輸送手段も未発達だったこの時代に、数百名ものランナーが大陸を横断するのだから、当然、さまざまなトラブルが発生する。また、当時はプロスポーツ選手とアマスポーツ選手の境界が厳然と存在し、その間の駆け引きにこのマラソンも翻弄される。
 これらの難関を、レースの主催者とランナーたちが乗り越えていく。レースを進めるうちに心を通じ合い、協力しつつ難関を突破していく人間ドラマが本書の醍醐味だ。
 かつては世界レベルにあった老ランナー、スコットランドからやってきた失業中の職工、これまた失業中の元炭坑夫、元ダンサーの女性など、多様なランナーたちが物語を彩る。これらの個性的な面々が絡み合い、人間ドラマが描かれていく。
 恋愛、一族代表としての責任、個人的野望、貴族としての矜持などなど、いろいろな思惑が交錯しつつ、レースは進んでいく。そして迎えるゴールはニューヨーク。42.195 kmとはまた違う感動がある。

 最近、運動へのモチベーションを高めている私は、さらに妄想が刺激されてしまった。この勢いに乗ってジム通いを始めるかどうか、悩ましい…。



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【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...