2014年6月10日火曜日

書評 泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』(新潮文庫)

二重、三重に仕掛けられた巧みなトリック。読み終えた瞬間、再びページを繰ってしまうこと間違いなし。やられた~。


 昭和62年に刊行され、いまだに重版を重ねている名作ミステリー。古さなどまったく感じず、あっという間に読み終えてしまった。

 ヨギ ガンジーという怪しげなオッサンが探偵役。ガンジーが二人の連れとともに巻き込まれたのは、とある宗教団体の跡継ぎ問題だった。人里離れた山奥で断食修行を行い、その結果で跡継ぎを決めるのだという。いかにもな設定だ。
 最後は二重、三重に張り巡らされたトリックが次々と明らかになり、すべての謎が解き明かされる。私は、そのうちの一つを見破っており
「大したことないなあ」
と優越感に浸っていたが、ギャフンと言わされてしまった。
「そのトリックは、だいたいの読者に見破られてしまうんですよねえ(想定内)」
という、作者の声が聞こえてきそうだ。うーん、腹が立つ。

 事件はすべて解決し、エピローグへ。そして最後の一文を読み終えたとき…
「えっ、マジで?」
思わず、再びページを繰ってしまった。「この本に」そんな仕掛けがしてあったとは。「大したことないなあ」どころか、KO負けである。脱帽。

 編集を仕事にしている者にとって、一文字も直すことが許されない本ってどうなんだろうなあ…。どういう意味かは、読んでのお楽しみ。



【楽天ブックスならいつでも送料無料】しあわせの書 [ 泡坂妻夫 ]
【楽天ブックスならいつでも送料無料】しあわせの書 [ 泡坂妻夫 ]
価格:464円(税込、送料込)(楽天ブックス)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

2014年6月8日日曜日

【予想の回顧】安田記念、垂水S、鳴尾記念(2014)

 安田記念の本命は◎カレンブラックヒル。5、6番手と、想定よりもやや後ろの位置取り。4コーナーでは少し外に持ち出して進路を確保するが、直線は伸びず、9着まで。前に行った馬は総崩れで、上がりが37秒もかかったレースでは先行馬には厳しかった。前が有利の見立てだったのだが…。
 勝ったのは人気のジャスタウェイ。最後はグランプリボスとの一騎打ち。直線半ばで少し差を広げられ
「これは2着までか」
と思ったところ、ラスト50 mで内から馬体を併せて差しきった。底力を見せつけた。
 2着のグランプリボスには驚いた。休み明けも重馬場もいい印象がなかったので、まったく馬券対象外だった。ポン駆けしないというよりも、きっちり仕上げられたときに力を発揮する馬なのだろう。まだ終わっていないことを示した。

 垂水Sは◎デウスウルトが後方待機から4コーナーで大外へ。いくら阪神外回りといえども、開幕週の馬場ではこれでは届かない。7着に沈んだ。

 土曜は阪神で鳴尾記念。◎カレンミロティックは3番手から。そのままの位置で4コーナーを回ったが、外に出せず内を突く。しぶとく脚を伸ばしたが突き抜けることはできず、ハナ、ハナ、クビ差の4着まで。もうひと押しだった。2着に推奨穴馬のアドマイヤタイシが入った(プチ自慢)。馬券はハズレ。

 今週は3戦3敗で、他もチョロチョロ。開催が変わっても流れは上向かなかった。

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ
にほんブログ村

2014年6月7日土曜日

【予想と与太話】安田記念、垂水S(2014)~馬場が鍵を握る今年のレース~

 今週は安田記念。明治から昭和初期まで日本の競馬界の礎を築いた安田伊左衛門氏の名を冠したGIである。この安田氏についてちょっと調べてみた。
 安田氏は東大を卒業後に陸軍に入り、出世コースをばく進。その後、銀行の取締役などを経て東京競馬倶楽部の理事になった。その後も競馬にかかわり続け、晩年に日本中央競馬会の初代理事長に就任したという人らしい。軍人さんとは知りませなんだ。競馬はもともと富国強兵の一環として強い軍馬を育てようというところから始まったのだから、軍との結びつきが強いのも頷ける。
 ただ、理事長をしたのは1年間だけで、その後に2代目理事長に就任したのが有馬頼寧氏だったそうだ。有馬記念の有馬氏ですな。

 レースにいってみたい。
 いいメンバーが揃った。普通ならジャスタウェイが一枚上なのだろうが、海外遠征明け初戦で、馬場もかなり悪化しそう。すんなりは収まらないと見た。
 本命は◎カレンブラックヒル。3歳秋に毎日王冠でデビュー5連勝を飾った。このレースで2着に入ったのがジャスタウェイ。12番人気で馬連は万馬券だった。取らせてもらった馬券なので、よく覚えている(自慢)。
 しかしカレンブラックヒルはその後スランプに陥り、もう終わってしまったと思っていた。ところが今年に入って復調の兆しを見せ、前走で毎日王冠以来、約1年半ぶりの勝利を挙げた。重馬場も苦にしないし、先行力も魅力。完全復活を期待したい。
 推奨穴馬は2頭。まずはクラレント。なんでこんなに人気がないのだろう。もう一頭はダノンシャーク。昨秋のマイルCSで1番人気だった馬だ。

 垂水Sは◎デウスウルトを狙う。前走はハイペースに巻き込まれたもの。度外視したい。

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ
にほんブログ村

2014年6月6日金曜日

【予想と与太話】鳴尾記念(2014)~心配事満載だが~

 今週から阪神・東京開催が開幕。一昨年からそうなった。それ以前は京都→中京→阪神の順だったのだが、京都を6週間に延ばし、その次に2週間前倒しで阪神が入り、中京はその後ろに回った。大昔の順に戻ったことになる。
 その結果、この時期に組まれていた金鯱賞と入れ替わりで鳴尾記念が宝塚記念の前哨戦に復帰した。鳴尾記念は距離も時期も変化の激しい重賞なのだが、いまの条件で落ち着くことができるだろうか。個人的には、6週間開催は気持ち悪いので、以前の京都→中京→阪神の順に戻してほしい。鳴尾記念には、また動いてもらうことになるが…。

 レースにいってみたい。
 GI前哨戦にしては小粒な印象。しかし、昨年、一昨年も小粒な印象だったのだが、本番(宝塚記念)で馬券圏内に絡む馬が出ている。今年も要注意だ。
 本命は◎カレンミロティック。57 kg、小回り、雨予報、休み明けなど心配事満載だが、このメンバーなら何とかしてくれないか。渋化馬場はイマイチなので、雨は小降りでお願いしたい。馬場が悪くなるようなら、本命を変えるかも。
 推奨穴馬はアドマイヤタイシ。長期休養あけをひと叩きして変身がないか。

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ
にほんブログ村

2014年6月3日火曜日

書評 スティーヴ・ハミルトン『解錠師』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 話すことのできなくなった少年は、解錠師(金庫破り)となった。彼はなぜ、そしてどのようにして解錠師となったのか。
 心に傷を負った少年の生き様をベースに、生い立ちの謎、金庫破りのスリル、そして少年の恋心が見事に絡まり合った一冊。

 二つの時系列の話を最後に交わらせてすべてを明らかにするという、よくある手法のミステリーなのだが、その中身はありきたりではない。前半部、後半部とも、マイクの影のある人生を淡々と描き出すのだが、この淡々とした筆致が物語の雰囲気とマッチして、独特の世界観を構成している。翻訳本にありがちな冗長な記述もなく、どんどんのめり込んでしまった。
 こう書いてしまうと、静かなミステリーのように聞こえてしまうが、そうではない。特に後半部の金庫破りのストーリーはハラハラドキドキの連続。スリル満点だ。

 マイクの行動の原動力(モチベーション)が恋というのがよかった。私がもっと若ければマイクにさらに感情移入できたのだろうが、恋から離れてしまったオッサンには、マイクは息子のように見えてしまった。
 ちなみに私の娘(小1)は、ついこの前まで恋(love)と鯉(carp)の区別がついていなかった。

<粗筋>
 ある事件をきっかけに、言葉を話せなくなったマイク。みんな同情してくれるけれど、誰も気持ちを分かってくれない。そんな彼が、ある少女に恋をする。自分の気持ちを理解してくれる存在を、初めて見つけたのだ。
 物語は、マイクが言葉を失ってから成人するまでの期間と、長じて金庫破りとして闇の世界を生きる期間とが、並行して語られる。前半部では、話せないながらも友人を作り、絵の才能に目覚め、ついに自分の気持ちを分かってくれる少女に出会って恋をする。後半部では、アメリカ中を転々とし、闇の世界で天才金庫破りとして懸命に生きる姿が描かれる。
 なぜ、どのようにしてマイクは金庫破りとなったのか。そして、金庫破りとしてのマイクの波瀾万丈な生き様は、どこに帰着するのか。二つのストーリーが重なるとき、すべてがつながる。




にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

2014年6月1日日曜日

【予想の回顧】ダービー、目黒記念、安土城S、朱雀S、欅S(2014)

 ダービーの本命は◎トゥザワールド。普通にスタートを切ったように見えたのだが、下げて後方へ。馬群の外を回る。なんでやねん。先行集団の内につけてほしかった。
 対照的にワンアンドオンリー、イスラボニータ、トーセンスターダムの有力馬が先行集団を形成。なぜここにトゥザワールドがいないのか…。
 3コーナー過ぎに、逃げたエキマエが故障で後退。押し出されるように先頭に立ったのは何とトーセンスターダム。ところがこれも直線半ばで内に刺さってラチに激突して失速。ここで先頭に出たイスラボニータに襲いかかったのがワンアンドオンリー。先行策から押し切って、見事にビッグタイトルを手にした。ここ一番でノリマジックが炸裂。前に行くと教えてくれていれば本命にしたのに…。横山典騎手にも橋口調教師にも涙はなく、満面の笑顔だったのが印象に残った。
 4コーナーを先行集団にいた馬が1~4着を占めたように、今年も内を通った先行馬が上位を占めた。トゥザワールド向きの展開になると思ったのだが、後方から外を回しては5着が精一杯。不完全燃焼だった。序盤の位置取りが悔やまれる。

 目黒記念は◎ラブリーデイが持ったままで残り400 mで先頭に立つ。満を持して追い出して突き放して完勝…のはずだったのだが、ジリジリとしか伸びず、最後はドドッとかわされて5着に沈んだ。それほど速いペースにも思えなかったが…。

 安土城Sは◎レッドアリオンが直線で失速し、9着に惨敗。気分屋なのか、たまにこういうレースがある。

 土曜の京都メインは朱雀S。
 本命◎シェルビーは単勝1倍台の断然人気。道中は後方の内目で待機。直線入り口で外の進路を探ったが開かず、内を突く。ラチ沿いをグイグイ伸びてフォーチュンスターをいったんはかわしたように見えたが、最後は競り負けてアタマ差の2着。外に出せていれば突き抜けていたかも。
 馬券は1着のフォーチュンスターを蹴飛ばしており、ハズレ。

 東京では欅S。
 本命◎ワイドバッハは後方から。4コーナーでも後方3番手だったが、そこから大外に出すと最速の上がりで2着に突っ込んだ。差しの決まる展開なら重賞でもやれそうだ。
 馬券は安かったが馬連をとった。

 今週は5戦1勝で、1勝も本命サイドの馬券。来週からは開催も変わることだし、巻き返したい。

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ
にほんブログ村

2014年5月31日土曜日

【予想と与太話】ダービー、目黒記念、安土城S(2014)~展開が鍵を握る今年のダービー~

 さあ、今週はダービー。競馬界の盆と言えばいいのか、正月と言えばいいのか。ともかく、競馬カレンダーの節目となる日がやってきた。

 JRAのCM(今年のCMの主旨はよく分からないが…)で取り上げられたのはディープインパクト。強い勝ちっぷりだった。ダービーには、やはり大外一気が似合う…のだが、忘れてはいけないのが、2着のインティライミ。CMにも内ラチ沿いで粘っている姿が映っている。実は、ダービーは案外、前の馬が残るのだ。
 イメージ的には大外一気なのだが、ここ10年でそういう勝ち方をしたのは上記のディープインパクト、ディープスカイ、キズナ程度ではないだろうか。ウオッカもオルフェーヴルも、大外ではなく馬群を抜けてきた(間違ってたらすみません)。
 また、前に行ったアサクサキングスが穴を開けたように、4コーナー3番手以内の馬が、ほぼ毎年馬券に絡んでいる。昨年の3着馬アポロソニックも4コーナーを真っ先に回った馬だ。

 このように、イメージとは裏腹に、前に行ける馬や内から抜け出してこれる馬が有利なのだ。特に今年はどの馬が逃げるかも分からず、かなりのスローが見込まれる。
 それをふまえて、本命は◎トゥザワールド。スッと前につけて速い上がりを使えるこの馬向きの流れになると見た。いい枠も引いた。
 他の有力馬に触れておきたい。レッドリヴェールは力の比較が難しい。バウンスシャッセをを物差しにすると、皐月賞11着→オークス3着だから、牝馬のレベルはそれほど高くないことになる。ところがハープスターを物差しにすれば、これに新潟2歳Sで完敗したイスラボニータが皐月賞を制したのだから、ハープスターと接戦してきた馬なら十分通用することになる。怖いが、外枠でもあり評価を下げる。
 イスラボニータは、距離も心配だが外枠が痛い。ワンアンドオンリートーセンスターダムは流れが向きそうにない。ワンアンドオンリーは内をズバッと抜けてくる可能性があるかもしれないが、トーセンスターダムはかなり厳しそう。

 推奨穴馬はウインフルブルーム…のはずだったのだが、無念の回避。本命に推すことも考えていただけに、残念だ。代わりに挙げたいのがサウンズオブアース。内で死んだふりをして、うまく進路が開けば怖い。

 目黒記念は人気でも◎ラブリーデイ

 京都のメインは安土城S。ダービーの裏番組が安土城って…もう少し何とかならんのか。
 本命は◎レッドアリオン。前々走の惨敗の原因が不明だが、前走はまずまず走った。オープン特別の今回はもうひと押し。

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ
にほんブログ村

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...