2013年5月15日水曜日

書評 本田悦朗『アベノミクスの真実』(幻冬舎)

「アベノミクスって何やねん。ホンマに景気よくなるんかいな」
という疑問に答える本。アベノミクスにより、どういう仕組みで景気がよくなるか(よくするつもりか)が、経済音痴の私にもよく理解できた。アベノミクス側の立場が、とても分かりやすく書かれた本である。

 本書は安倍政権のブレーンの一人である本田氏が、アベノミクスのなんたるかを解説した本である。本田氏はアベノミクスを実行する側の主要人物なので、当然、本書はアベノミクスを肯定する立場から書かれている。

 まず第1章で、アベノミクスの手法が説明される。物化上昇率2%という目標(インフレターゲット)を設定し、日銀がそれに向けて突き進む姿勢を見せることが重要であると、繰り返し強調される。
 2%という目標を掲げることももちろんだが、その目標を達成するための覚悟(本気モード)を見せることが何より重要なのだそうだ。なぜなら景気というのは雰囲気であり、多くの人たちが「どうやら本当に物価は上昇しそうだ」と思わなければ物価は上昇しないらしい。
 第2章は、日本がデフレに陥り、それを脱却できない構図が描かれる。ひと言でいうと「日銀の金融緩和が足らん」ことが原因だそうだ。したがって「アベノミクスの異次元緩和が必要」という結論に至る。
 第3章は、巷にあふれるアベノミクス批判に応える章である。「物価は上がって給料が下がったら困る」などの疑問に、本田氏が反論する。
 第4章は、本田氏のソ連時代の経験が語られる。
 最後の第5章では、アベノミクスが目指す日本社会が書かれている。エネルギー問題やTPPについても触れられている。

 以上の章立てからも分かるように、本書の核は1~3章である。アベノミクスとはどういう手法であり、それによってどのような仕組みで景気が上昇していくのかはよく分かった。簡単にいうと次のような仕組みだ。

日銀の金融緩和→金融市場のインフレ期待形成→株価上昇などによる企業収支の改善→企業に資金が回る→従業員の給料が増える→家計の購買意欲が増す→企業に資金が回る→以下同様

 このうち「日銀の金融緩和→金融市場のインフレ期待形成→株価上昇などによる企業収支の改善→企業に資金が回る」ところまでは納得できた。最近発表された企業の決算を見ても、実際に収支が改善しているのだから(少なくとも今のところは)アベノミクスの狙い通りに事が運んでいる。
「アベノミクス、やるやんか」
といったところである。

 一方、ちょっと説得力に欠けるなあと思ったのは「企業に資金が回る→従業員の給料が増える」の部分だ。ここが「ホンマかなあ…」と思ってしまう。本書では、この部分については
「従って、2%程度のインフレ率が実現する際には、賃金はそれ以上に上昇しているはずです」(p.100)
とか
「それによって日本経済全体の所得(GDP)が増えれば、やがて賃金も上昇してくるでしょう」(p.101)
など、あたかも当然のことのように書かれている。ホンマなんかなあ…。
「物価は2%上がったけど、給料は1%しか上がりませんでした」
なんてことにならないよう、本田氏のいう通りになってほしいのだが、不安は残る。

 本書を読んで、アベノミクス側の意見は、経済音痴なりによく理解できた。とても分かりやすい本だった。
 しかし、分かりやすいことと、信じられるかどうかはまた別の話。次は、アベノミクス側ではない立場の本を読んでみたい。



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