2013年10月2日水曜日

書評 藤野英人『「起業」の歩き方』(実務教育出版)

 なるほど、どういう人が「起業」できる人種なのか、よく分かった。ちなみに、私は起業できる人種ではないことが分かった…。
「起業」とはどういうプロセスなのか、そのためにすべきことは何か、などが具体例を元にとても分かりやすく書かれた本である。

 著者の藤野氏が立ち上げた資産運用会社「レオス・キャピタルワークス」、ミネラルウォーターの宅配会社「ウォーターダイレクト」、医薬品のネット販売事業を展開する「ケンコーコム」。この3社を例に、創業から上場までのプロセスが語られる。

 How to本ではないし、会社を作って上場するための裏技が紹介された本でもない。会社を創業して上場に至までの心構えを説いた本だ。「どうすれば上場できるか」ではなく、「どのような人が上場できるか」が書かれているとも言える。
 起業するために必要な資質としては、たとえば次のようなことが挙げられている。

何を、どのようにして売りたいかがはっきりしている
 これは当たり前か。これがないと会社は始まらない。とはいえ中には「まず起業ありき」の人もいるだろう。「オレも孫さんや三木谷さんみたいになってやるぜ」という野望に燃えている人だ。しかしそれは順序が逆で、起業はあくまでも手段であり、目的をかなえるためのものなのだ。

銀座で飲んだり、外車を乗り回したりしたい人は向かない
 創業者が率先してジャブジャブ散財しているようでは、会社は成り立たない。

頭を下げること、コネを利用することなどが苦にならない
 起業するにあたり「身内や仲間に迷惑はかけられない」などと、近い人に頼ったり、頭を下げたりできないのは「本当の意味でプライドが高くないから」だそうだ。もちろん迷惑をかけてよいわけではないが、本気なら身内であろうと親友であろうと、頼れるべき人には頼るだろうと書いてある。

 なるほど、納得だ。他にもさまざまな資質が具体例とともに書かれている。将来、会社を興してみたいと考えている人はぜひ目を通しておくべきだ。「起業の現実」が体感できるだろう。

 さて私はというと、企業や上場などという大それたことは考えていないのだが「将来的には会社組織に属さずにやってみたいなあ」と漠然と考えている。でも、この歳(40を過ぎた)になって「漠然」と考えているようではダメだということがよくわかった。やるならやるで、具体的なプランを練っていかないと何も始まらないのだ。
 そのことに改めて気づいただけでも、本書を読んでよかったと思う。



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