2016年10月13日木曜日

【書評】宮部みゆき『名もなき毒』(文春文庫)

作者の人格と作品のドス黒さのギャップ


 杉村三郎シリーズ第2弾。第1弾は未読なのだが、問題なく楽しめた。

 序盤で軸となるのは毒殺事件。青酸カリにより4人が殺害される。その被害者の一人である老人の孫と杉村が、ひょんなきっかけから関係を深めていき、孫娘の心の傷を癒やしていくことになる。
 中盤以降は、宮部氏お得意の「人を不幸のどん底に陥れることだけが目的の胸くそ悪い人間」が登場し、陰湿に暴れまくる。宮部氏はあんなに人のよい女性なのに、こういうヘドの出る悪人を描くことにかけては、右に出る者がいない。宮部氏に限らないが、作者の人格と作品のドス黒さには、大きなギャップがあることが多い。悪人を描けるのは、実は善人にしかできないことなのかもしれない。

 終盤は、胸くそ悪い人物の巻き起こす騒動と毒殺事件が絡み合い、それらが一応の解決を見て幕を閉じる。そして明らかになる「名もなき毒」の正体。決して読後感のよい作品ではないが、それでもまた宮部作品が読みたくなってしまうのが不思議だ。



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