2016年10月5日水曜日

【書評】湊かなえ『サファイア』(ハルキ文庫)

自らをモデルにした一話にはビックリ


 宝石名がタイトルの話が七つ収められた短編集。真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネットの七話が並べられている。
 人の悪意を書くことにかけては現代日本、いや世界でナンバーワン(当社比)の湊氏にしては、今回はどの話も悪意指数はやや抑えめ。しかし、各話のラスト(オチ)は切れ味抜群で、「エッ」と絶句するような読後感。エピローグ的な余韻がなく、ブツッと話が切られる終わり方なのだ。
 驚いたのは、自らをモデルにした一話。とことんまで突き詰め、それを「さらけ出す」思い切りの良さと勇気には脱帽。しかしこれは「自分自身をさらけ出す」のとはまた違うことであり、だからこそ「悪意全開」の作品を次々と世に出せるのだろう。湊氏は「悪意をたくさん持っている人」ではなく「悪意をとことんまで突き詰められる人」なのだ。



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