2012年12月12日水曜日

書評 東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』(光文社文庫)

 東野氏の短編集。表題作『犯人のいない殺人の夜』を含む七つのミステリーが収められている。脈絡なく七つの話を集めたわけではなく、タイトルの通り「犯人のいない殺人」というテーマで統一されている。
「犯人がいないのになぜ殺人が起こるのか?」
そりゃそうだ。しかし本書の話には、殺人者はいるのだが、犯人はいない。ただし「犯人が捕まらない」とか「犯人が分からないまま話が終わる」ということではないので、念のため。

 最も印象に残ったのは、表題作『犯人のいない殺人の夜』だ。短編で登場人物も少ないため、読んでいくうちに殺人の首謀者は予想がつく。しかし、殺害方法や動機がさっぱり分からない。なぜ、どうやって殺人は行われたのか。事件後と事件前を行ったり来たりしつつ、話は進む。徐々に明らかになる謎。そして最後はアッと驚くどんでん返し。東野小説の書評を書くと「どんでん返し」というフレーズが毎回出てきてしまうが、こう書かずにはいられない。今回もしてやられました。

 意図して「犯人のいない」話を書いていたのか、それとも「こういうテーマの短編を集めてみましょう」と選んだのがこの短編集なのか。どちらにしろ、東野氏の手の内の豊富さには相変わらず圧倒される。

 これらを一話完結の連ドラにしたくなる気持ちもわかる。ところが、フジテレビが「東野圭吾ミステリーズ」として放映したところ、失敗に終わったようだ。なぜなんだろう。序盤で犯人の目星がついてしまうところがウケなかったのかもしれない。




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