科学者が、科学的な思考法の重要性を、「非」科学的に書いた本。
『すべてがFになる』のドラマ化で再ブレイク中の森氏が
「科学的に物事を考えないと損する、というか危険だよ」
ということを述べた本。
「科学的思考法」というとちょっと大げさだが、「みんなが」とか「多くの方々が」とか「使用者の大多数が」とか、そういう形容詞に惑わされずに、物差し(数値)で考えれば騙されたりしないよ、という主旨の本だ。
しかし、本書の主張は科学的ではない。これは、嘘が書いてあるという意味ではなく、森氏の個人的な見解・思いを元に述べられているという意味である。
本書では「科学的に考えないと損しますよ」ということが統計的に示されているわけではないし、そもそもそういう統計を作ること自体がほとんど無理だろう。森氏の見解を「非」科学的に伝えた本なのである。
科学の重要性を伝えるのに非科学的な主張にならざるを得ないのはちょっと皮肉な感じもするが、その分、科学に抵抗感のある人にとっても読みやすいものになっている。さすがは理系小説家だ。本書を書くのに、森氏よりも適した人は、少なくともいまの日本にはいないだろう。
非科学的に書かれた科学啓蒙書。科学に抵抗のある人にこそ読んでほしい。
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