2015年10月26日月曜日

【書評】渡辺淳子『東京近江寮食堂』(光文社)

滋賀県民の、滋賀県民による、滋賀県民のための小説


 滋賀県民の、滋賀県民による、滋賀県民のための小説。というのは言い過ぎかもしれないが、滋賀県を抜きにしては語れない一冊。滋賀県に住んでいなければ、おそらく本書は手に取っていなかったかもしれない。

「琵琶湖って何県にあるんだっけ?」
「滋賀県って、北陸? それとも東海?」
「大阪や京都から滋賀県って、日帰りでも行けるんだ(驚)」
などなど、関西の中では存在感のなさNo.1(独断)の滋賀県。私がその滋賀県に引っ越してきたのが9年前。その後、一女一男が生まれた。わが子たちはネイティブの滋賀県民だ。

 滋賀県民になって感じたのは
「滋賀県、ええところやん。もっと人気が出てもいいのになあ」
ということだ。京都は外国人も含めて観光客であふれかえっているのに、滋賀県はそうでもない。京都の不便なところに泊まるなら、大津に宿をとったほうが、よほど京都の中心地に出やすいのに。

 そんな滋賀県の魅力を余すところなく伝えたのが本書…と言いたいが、そういう本ではない。滋賀県の女性が、失踪した夫を探しに東京へ出てくる。そこで出会ったのが「東京近江寮」の面々。滋賀県民は格安で宿泊できるというこの宿で、個性的な仲間の助けを借りて夫を探す。
 もう1本の軸は近江料理。東京近江寮で厨房を担当することになったその女性が、料理人である夫のレシピで、滋賀県の郷土料理を提供する。目を見張るような料理こそないが、ホッと心が温まるような家庭的なメニューが続々登場。いいぞ滋賀県。

 滋賀県の魅力がふんだんに、しかしこっそりと控えめに紹介されるところがいかにも滋賀県らしい小説。京都駅から大津駅までは、じつはJRで10分。県庁所在地どうしが接しているのは京都府と滋賀県だけらしい。京都へご旅行の際には、滋賀県にもぜひお越しやす。




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