2016年9月16日金曜日

【書評】東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』(講談社文庫)

どちらが夢でどちらが現実なのか。それとも、そのような区別に意味はないのか


 愛する女性と同棲をしている世界と、愛する女性は他人のものである世界。この二つの世界が交互に描かれる。どちらが夢でどちらが現実なのか。どちらが先で、どちらが後なのか。どちらが本物で、どちらが改竄された世界なのか。それとも、そのような区別に意味はないのか。
 「記憶の改変」という、ありそうでなさそうな科学技術を巧みに用い、パラレルワールドへと読者を誘い込む筆力は、さすが東野氏。ラストは
「なるほど、よくできた話だなあ」
と思わせたところに、読者の想定のさらに上をいくどんでん返し。またも、してやられた。
 ただ「パラレルワールド」というと、時間的にもパラレル(並行している)と思い込んでいたので、最初は少し混乱した。本書の二つの世界は時間的には前後しているので、勘違いしないように。

《あらすじ》
 親友が紹介してくれた彼女は、かつて通学電車でひと目ぼれした女性だった。その女性にどんどん惹かれていく。場面はもう一つの世界に切り替わり、こちらの世界ではその女性と自分が同棲生活を送っている。どこまでが現実でどこからが夢なのか。
 記憶改変技術をからませながら、二つの世界が交互に語られる。その二つの世界がついに交わるとき、衝撃の事実が明らかになる。



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