2017年9月6日水曜日

【書評】湊かなえ『豆の上で眠る』(新潮文庫)

「本物」とは何なのだろうか

 湊小説にしては、悪意指数は低め。帯には「衝撃の姉妹ミステリー」とあるが、ミステリー色もそれほど強くない。とはいえ、いつもほど毒々しくはなくても、残るのは苦い読後感。
 誘拐された娘を探す両親の、いびつな様子。こういう、ちょっとずれた、いびつな人物を描くのが湊氏はじつにうまい。そして、2年後に帰ってきた娘は、その妹にとっては偽物にしか見えない。「本物」の姉はどこへ行ったのか。
 すべての謎が明らかになったとき、改めて問われる「本物」の意味。「わたしにとっての本物の姉」はいったいどこにいるのだろうか。

《あらすじ》
 小3の姉が誘拐された。血まなこになって姉を探す両親。しかし2年後に奇跡的に帰ってきた姉は、妹にとっては明らかに「偽物」だった。ところが、DNA鑑定を含む状況証拠は、姉は「本物」だと示している。
 姉は本物なのか、それとも偽物なのか。ラストシーンで突きつけられるのは、その真偽ではなく「本物の意味」だった。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]
豆の上で眠る (新潮文庫) [ 湊 かなえ ]
価格:637円(税込、送料無料) (2017/9/5時点)

楽天ブックス

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

 2020年のベストセラーをようやく読んだ。もっと早く読んでおくべきだった…。   スマホがどれだけ脳をハックしているかを、エビデンスと人類進化の観点から裏付けて分かりやすく解説。これは説得力がある。   スマホを持っている人は、必ず読んでおくべきだ。とくに、子どもを持っている人...