相撲の世界では、十両に上がると関取と呼ばれ、給与も含めてそれ以下の力士とは雲泥の差がつく。この壁を、あと少しのところで乗り越えられなかった6人の人生が、丹念な取材をもとに語られる。
「もう一番勝っていれば」「上の力士がもう一つ負けていれば」「いつも通りの相撲がとれていれば」。たらればを言えば切りがないが、何度も何度もたらればを自問自答したに違いない。人生の岐路がこれだけはっきり見えるのが、プロの世界の厳しいところだろう。
しかし、6人ともみんな「残念ではあるけれど、仕方ない」という感じで、悔やんでも悔やみきれないほどには思い詰めたところがないのが印象的だった。
もう一つ印象に残ったのは、怪我との戦い。怪我に泣かされる力士がいかに多いかがよく分かった。できるだけ怪我を避けるトレーニング法がもっと追求されてもよいと思うのだが、特に相撲ではなかなかそうはいかないのかなあ。逆に言うと、怪我が少なくなるような合理的なトレーニングを実践した力士が上位に行けるのかもしれない。
待遇は天と地ほど変わるが、実力がそれほど違うわけではない幕下上位と十両。そのせめぎ合いが見られる幕下上位の取り組みが最も面白いと言われるのも納得だ。私も含めて、5時過ぎから幕内上位の取り組みしか見ない人がほとんどだろうが、早い時間の取り組みも見たくなった。
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