2022年8月7日日曜日

【読書メモ】今田寛『ことわざから出会う心理学』(ミネルヴァ書房)

 書き方はやさしいが、中身はちょっと硬派な心理学の入門書。近年の心理学の研究で明らかにされた成果が、八つ紹介されている。血液型占いの真偽、人間は生まれ(親からの遺伝)か育ち(周囲の人間)のどちらの影響を大きく受けるのか、日本人が「出る杭」になるのを避けるのはなぜかなど、興味深いテーマが心理学の立場から説明される。

 心理学というと、フロイトの夢判断みたいなのを想像しがちだが、現代の心理学は、生物学や脳科学が取り入れられ、データの分析には統計学が必須であり、理系の学問に近づきつつある。
 特に行動遺伝学という双生児を用いた研究の成果には目を見張るものがあり、なんとなく常識とされていたことが覆ることもあるようだ。中でも「生まれか(遺伝)、育ちか(環境)」に関する知見に行動遺伝学が与えた影響は大きく、(ざっくり言えば)知能は遺伝の割合がかなり大きく、性格(社会的行動)は家族外での人間関係がそのほとんどを決定するそうだ。

 心理学の分野を長年、牽引してきた今田氏が、豊富な文献を参照しつつ、エビデンスベーストに「人間の性質」を解説してくれた。一般市民がちょっと詳しく心理学を覗いてみたいときには最適の一冊。

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