2012年7月7日土曜日

書評 外山滋比古『傷のあるリンゴ』(東京書籍)

『思考の整理学』などの著書で人気の外山さんによる、書き下ろしエッセイ集。「読んで納得、人生のヒント集」とでも言えばよいのだろうか。常識にとらわれない視点から、ハッとさせられる考え方が披露される。たとえばこんな調子だ。

 天災に対して備えている人たちに対して(天災に対する備え自体は悪くないと断ったうえで)

天災がきたらどうしようと思うなら、もっと確かにやってくる死について備えがなくてはおかしい。ところが、死に対して対策、備えをしている人は例外的である。それをおかしいとも思わないで生きているのは不思議である。

てな具合である。
 このように示唆に富むエッセイがたくさん収録されている。一冊の本として起承転結があるわけではないが、エッセイ集なのだから、それは仕方ないだろう。

 本書に通底している考え方は
「劣等感、貧乏、不合格、苦労などの負の体験や感情を、発散するのではなく溜め込め。そして、その溜め込んだ負のパワーを『正に転化して』解き放て」
ということだ。負のエネルギーを、おしゃべりなどによってパッパと解消してはいけない。また、正の体験ばかりで、負の体験をしていない人は大成できない。このようなことが、いろいろな側面から書かれている。
「せっかくの人生、どこかで爆発させたい、はじけたい」
と思っている人は、ぜひ読んでみてはどうだろうか。爆発させるための、いろいろなヒントが隠されている。

 私も、遅まきながら爆発を目指し、負のパワーを溜め込んでいくとしよう。などと思っていたら、さっそく今日も馬券が外れた。さい先よし、ということにしておきたい。



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