2015年1月25日日曜日

書評 夏樹静子『二人の夫をもつ女』(講談社文庫)

昭和の香りがぷんぷん漂ってくる短編集


 1980年に発売された短編集。表題の「二人の夫をもつ女」を含めた八つの短編が収められている。主人公は全て女性で、みんなハイミスまたはミセスである。彼女たちの一人称で話は語られる。
 各話の根底には「感情のもつれ」がある。主人公の女性たちはみんな、嫉妬、猜疑心、憎しみなどの気持ちを抱いており、それが事件の遠因となっている。そして最後に全てが明らかになったときの、彼女たちの思いが同じなのだ。
「ああ、知らなければよかった」

 各話とも、最後は全てのピースがきっちりはまって話は閉じる。込み入ったトリックはないが、簡潔に、分かりやすく全てがつながる。非常に気持ちよく話が閉じるのだ。構想の段階で、プロットがよく練られているのだろう。
 また郊外団地、夢のマイホーム、公衆電話など、昭和のど真ん中の香りがぷんぷん漂ってくるのもよかった。スーパーマーケットが当たり前になり、核家族化が進み、女性の社会進出も進み始め、女性の立ち位置がおおいに変化した時代だったのだろう。
 私は幼少期を大阪のベッドタウンの新興マンションで過ごしたのだが、その頃の雰囲気を思い出した。妙に懐かしい作品だった。




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