2015年11月26日木曜日

【書評】辻村深月『ロードムービー』(講談社文庫)

「確かにこういう感覚だった」とドキッとした


 緩くつながった、連作短編集。プロローグ的な最初の一話を含め、五つの短編が収められている。最後の一話を除く四話は、登場人物が少しずつ重なっており、前話の後日譚のようにも読める(最後の第五話もつながっているのかもしれないが、私には読み解けなかった)。
 本書を貫くテーマは、少年・少女の心の動きだ。イジメに遭う側の少年・少女の心情が、訥々と綴られる。

「確かにこういう感覚だった」
とドキッとした。大人になって忘れてしまった、少年期の感情を思い出させる小説だった。大人のようにドロドロとしているわけではないが、かといって単純に割り切れるわけでもない、少年期に特有の人間関係や感情が見事に表現されている。

 一番よかったのは、やはり表題作の「ロードムービー」だった。家出を企む小学生二人組の物語だ。じわじわと「友情」が伝わってくる。スポ根などとは真逆の、静かな、しかし固い友情が心を打った。

 私の娘は、いま小学2年生。ついつい重ねて読んでしまうことも多かった。そういう意味でも、ちょっと切なくなる読後感だった。

※翌日に追記
 本書は『冷たい校舎の時は止まる』のスピンアウト短編集だった。なるほど。本編も読んでみたい。




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