2016年1月29日金曜日

【書評】白井恭弘『外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か』(岩波新書)

スピードラーニングは(たぶん)正しかった



 第二言語習得論という学問分野があるのをご存じの方は少ないだろう。簡単にいうと、外国語を学習するときのあれやこれやを研究する分野である。
「人間は、母語の学習にはほぼ必ず成功するのに、外国語はほぼ成功しないのはなぜか」、「母語を学ぶときと外国語を学ぶときで、同じことと違うことは」、「臨界期は本当にあるのか」、「ダブルネイティブにはどうすればなれるのか」などが研究テーマである。
 本書は、その第二言語習得論の第一人者である白井氏が、その研究成果を分かりやすく伝え、さらにはその応用(外国語の効果的な学び方)を示したものである。

 興味深い研究成果がいくつもあった。たとえば臨界期。臨界期とは
「この年齢までに新しい言語を習得しなければ、その言語のネイティブにはなれない」
という期限である。この臨界期の存在が世間に広がり
「外国語は小さいときからやらせないと」
と早期教育が流行した。いまは一時期ほどではないようだが、それでも早期教育はさかんである。
 本書の結論を述べると
「はっきりした臨界期はない。ただし、早い年齢から学び始めるほうが有利なのは間違いない」
というのだ。あらたいへん。早く子どもを英会話教室に通わせたほうがいいの?

 もう一つは「インプットが大切」という研究成果。大方の意味は分かるようなインプット(読む・聞く)を大量に行うのが非常に効果的な学習法なのだそうだ。これを読んで思い出したのがスピードラーニング。
「うさん臭いなあ」
と思っていたのだが
「ある程度の意味が理解できる音声を大量に聞き流す」
という手法は正しいのだそうだ。人気には理由があったということか。

 以上のような研究成果が説明された後、最後に効果的な学習法が紹介される。どうすれば効率よく外国語をマスターできるのか。科学的知見に基づいた情報を得たい人にはお勧めの一冊。
 一つだけ種明かしをすると「モチベーション(やる気)」は非常に重要なファクターの一つである。やる気のない人がいくらやっても効果は低いのだ。そりゃそうだな。

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2 件のコメント:

  1. シロート・モネ2016年4月28日 15:53

    はじめまして、
    ブログ村コンテスト、優勝おめでとうございます!
    (だいぶ前の話で、すみません)

    第二言語何たらと言う学問があるとは、存じませんでした。
    しかし英語学習ビジネスの規模を考えれば、有ってもいい感じではありますね。

    私は8年留学した経験がありまして、渡米当初はただ授業に座って聞いているという日々が続きましたので、似たような勉強法のスピードラーニングは、有効そうだと思っております。ただ多少効いて来るまで、一定量、根気よく聞き続ける事が必要でしょう。

    やる気がない人はダメだというのは、完全にご明察だと思います。(笑)
    唯々諾々と親の転勤について行った私と、交換留学で英語を学びに来た生徒では、それなりに話せるようになるまでにドえらい時間差がございました。



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    1. シロート・モネ様〔クロード(玄人)・モネのもじりですね(笑)〕、コメントありがとうございました。やはり「浴びるように聞く」というのは、一定の効果があるのですね。ただし「やる気があれば」の話だということですね(笑)。

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