2016年1月2日土曜日

【映画評】羊たちの沈黙(1991)、ハンニバル(2001)

主役を食ってしまった名演技


 一世を風靡したサイコスリラーとその続編。『羊たちの沈黙』は見たのだが、『ハンニバル』はまだだった。そこで、改めて第一作から見てみた。
 最初の『羊たちの沈黙』では、ジョディ・フォスター演じるFBI心理捜査官(クラリス・スターリング)が、アンソニー・ホプキンス演じる殺人犯の助言を受けつつ、猟奇的な連続殺人事件を解決する。この殺人犯がハンニバル・レクター博士。その紳士然とした振る舞いと、人の心理を掴む高度な知識。そしてその裏に潜む人肉食いの狂気。この狂気の天才が、主役の心理捜査官以上に強烈な印象を残した作品だった。
 クラリスが犯人を追い詰める様子も緊迫感にあふれており、ジョディ・フォスターも素晴らしい演技だった。FBI心理捜査官関連の本もたくさん出版され、ブームを巻き起こしたのも納得。「心理面から犯人に迫っていく」という部署が本当にFBIにあると聞いて興味を持たない人はいないだろう。
 しかし、このFBI心理捜査官も、ハンニバル・レクターの迫真の演技に食われ気味だった。

 その10年後に、主役を食ったハンニバル・レクターを主人公に据えたのが『ハンニバル』。
 ただし2作目は、心理戦というよりも、追いつ追われつの攻防戦。前作で逃亡に成功したレクターは、イタリアに潜伏。その正体に気づいたある刑事。その情報が、レクターを追う大富豪にもたらされる。莫大な資金を武器に、レクターを追い詰める大富豪。そして情報はFBIにも入り、クラリスもレクターの後を追う。

 最後は続きを匂わせる終わり方だったのだが、今のところ続編は作られていない。2作目も十分に面白かったが、心理操作の面を控えめにして、猟奇的雰囲気(ちょっとグロい)を前面に押し出したのがよくなかったのかもしれない。
『ハンニバル』上映から15年が経過したが、最後を締めくくる1本が見たい。





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