2019年5月6日月曜日

【読書メモ】中橋孝博『日本人の起源─人類誕生から縄文・弥生へ─』(講談社学術文庫)

 いわゆる「日本人」の成り立ちを、最新の知見をまじえて解説した良書。前半は人類、すなわちホモ族誕生までの進化の歴史が描かれる。チンパンジーなどの霊長類と分かれてから、たくさんのホモ族が誕生し、世界へ拡散した様子がよく分かる。しかし、その詳細は不明な点も多く、鍵となる化石の発見が待たれているそうだ。
 そして、数十万年前にわれわれホモ・サピエンスが誕生。アフリカで誕生したホモ・サピエンスが世界に拡散したという説が有力だが、これもまだ決定的ではないらしい。

 後半は日本が舞台。現在のいわゆる「日本人」が、どのように形成されていったのかが書かれている。とはいえ、こちらもまだ分かっていないことがたくさんあるのだそうだ。定説では、数万年前に縄文系の人類が、ホモ・サピエンスとしては初めて日本列島に入り、数千年前に稲作技術を携えた弥生系の人類と混血しつつ置き換わっていき、現在の日本人になったと言われている。
 この定説が有力ではあるのだが、これもまだ決定的ではないらしい。縄文人が「進化」していまの日本人になったという説もまだ残っているのだ。また、渡来した弥生系の人類の出身地や大規模な渡来の回数などについては、いまでもさまざまな説がある。

 これらのことが、最新の知見を含めて解説されている。つい最近分かったことも数多く紹介されていて、興味深く読めた。

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