2012年1月21日土曜日

書評 高村薫『神の火(上)(下)』(新潮文庫)

 原発を舞台にしたスパイ小説。高村さん独特の、薄暗い雰囲気に満ちたストーリーである。『リヴィエラを撃て』(こちらもお薦め)に通じるところがある。
 ソ連のスパイである島田という男が主人公。その島田も含め、主な登場人物たちはみな、腹の中に虚無を抱え、脳ミソの中もドロドロしている。こういう人物たちを描くことにかけては、高村さんの右に出る作家はいない(本ブログ比)。今回もそういった、重たく濁った精神の世界を堪能した。

 一度はスパイから足を洗ったはずなのに、日本、アメリカ、ソ連、北朝鮮が入り交じるスパイ情報戦の渦中に再び舞い戻った島田。日本海(若狭湾)に設立された原発を軸に話は進む。
 序盤は原発襲撃プランを巡る情報戦が繰り広げられ、そのカギとなるカードを巡る駆け引きが行われる。プランの詳細は何か、そしてプランは誰の手へ収まるのか、ワクワク・ドキドキの展開である。
 しかし上巻の途中で、プランの内容や、その周辺事情がほぼ明らかになる。
「あれ、まだページは残っているのに…(こういうのが分かってしまうのが、紙の本の悲しいところですな)」
と思いつつ読み進めると、下巻の後半からは急展開。
「なるほど、上巻はこういう布石だったのか」
と冷静に分析できるのも、すべて読み終えてしまったからである。読んでいる途中は、残りのページ数など忘れてしまい、一気にラストにたどり着いた。

 この時期(2012年1月)に本書を読んだのは、もちろん昨年の福島原発の事故の影響がある。高村さんにとっては、震災の影響で本書が読まれるのは不本意かもしれない。しかし私は、本書を読んで、改めて原子力の危険を感じ取ることができた。
 昨年の福島原発の事故のきっかけは地震だった。おそらくこれからは、地震や津波でメルトダウンする原発はなくなるのだろう。しかし、それで安全なのだろうか。原発を襲うのは自然災害とは限らない。本書にも出てくるように、ミサイル一発飛んできたらジエンドである。ミサイルは大げさとしても、予期せぬミスやテロ行為に対して、100%安全と言い切れるのだろうか。
 そんなことはあり得ないということを、改めてこの小説は伝えたいのだと思う。だって、100%安全なら、原発はお台場や大阪湾にあるはずだもんねぇ。



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2012年1月20日金曜日

2012羅生門ステークス  オレの予想を聞いてくれよ

 土曜の京都メインは羅生門ステークス。さすがにこの極寒期の開催では、土曜日は渋いレースがメインになることが多い。
 ちなみに私は、この時期の京都開催(第1回、第2回)の雰囲気が好きだ。特に土曜はよい。この寒い時期に土曜から競馬に興じようなどというのは、本当に競馬が好きなオヤジ(とオババ)だけで、そういう連中がゾロゾロ集まって馬券に精を出す。パドックも観覧席も空いていて快適。
 そんなわけで冬の京都開催は大好きなのだが、ここ数年はPATでの購入がほとんどで、競馬場に行くのは年に1、2回。寂しい限りであるが、ちびっ子も二人いるし仕方がない。定年後は、土日はどっぷり現場で競馬に浸かりたいものだ。

 さて羅生門Sの予想だが、私の本命◎はトシギャングスター。準オープンクラスに昇級初戦だった前走で、クビ差の2着と、いきなり目処を立てた。極端な前残りの展開にならなければ、差し込んでくると見た。
 推奨穴馬はオースミイージー。前走で復活の兆しを見せた。展開がハマれば怖い。

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2012年1月15日日曜日

2012大和S、日経新春杯  予想の回顧

 土曜は大和S。本命のアイアムアクトレスは先団でレースを進めたが、3コーナーから手が動き始め、直線入り口ではすでに脱落。ブービー15着の大惨敗に終わった。いくらこの時期の4歳馬がダートのオープンクラスでは苦戦する傾向にあるとはいえ、あまりにも負けすぎだ。何かあったのか。
 もしアクシデントはなかったのなら、今年の4歳馬は(とくにダート戦線では)レベルが低いのかもしれない。

 日曜は日経新春杯。本命◎のスマートロビンの馬体重を見ると、何と+26 kg。パドックでも、やはり太く見える。
「これは本命を変更しようかなあ…」
と迷っていたら、パドック解説の鈴木由希子さんが「ほとんどが成長分」と言うし、ブログで◎を発表していた手前、本命を変えるのも気が引けて、結局スマートロビンから馬券を買った。
 レースでは注文通りハナを切り、マイペースで運んでいるように見えたのだが、最初の1000 mは59.1秒。それほどスローではない。それでも、4コーナーまでは持ったままで回ってきたので
「いける」
と思ったのも束の間、ビートブラックダノンバラードに並びかけられたところでギブアップ。バッタリ止まってしまったわけではないが、5着に敗れた。やはり、太めが敗因だったように思う。
 たとえブログに本命を発表していても、何かあったときにはアッサリと本命を変更する勇気(大げさやなあ)も必要だと感じた(珍しく、反省?)。

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2012年1月14日土曜日

2012日経新春杯  オレの予想を聞いてくれよ

 日曜の京都メインは日経新春杯。伝統のハンデGIIだ。
「GIはちょっと敷居が高いよう」
という馬が勢揃いするレースである。
 過去の勝ち馬には、カミノクレッセ、ハギノリアルキング、ゴーゴーゼット、ムッシュシェクルなどの名脇役が名を連ねている。他にもマチカネタンホイザホワイトアローなどがこのレースの常連だった記憶がある。懐かしい。
 春の天皇賞を初めとするGIにはほとんど結びつかない。ここ10年で、このレースをステップにGIを制した馬は、昨年2着のヒルノダムールくらいか。まさに、ミスター(ミセス?)脇役決定戦といえよう。今年、ミスター脇役の座をゲットするのはどの馬か。

 今年も、いかにも日経新春杯らしい(?)メンツが揃った。その中から、私の本命◎はスマートロビン。前走で準オープンを勝ったばかりの馬だが、神戸新聞杯5着など、重賞級の能力は示している。ハンデは手頃な55 kgで、得意の京都コース。しかも、今の京都は内枠の先行馬がよく残る。絶好の1番枠から、押し切りを期待したい。
 相手は、58.5 kgの斤量は気になるが、トゥザグローリーは押さえざるをえまい。ナムラクレセントビートブラックは、ハンデが見込まれたので評価を下げる。この両馬よりは、8枠の4歳ディープ産駒2頭、ダノンバラードリベルタスが面白そう。強いて推奨穴馬を挙げるならメイショウクオリア。前残りの馬場で、積極策に出ればアッと言わせる場面があるかも。

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2012年1月13日金曜日

2012大和ステークス  オレの予想を聞いてくれよ

 土曜の京都メインは大和ステークス。比較的新しいレースであるように思うのだが、と思って調べてみると、今回で10回目のようだ。10年など、あっという間に経ってしまいますなあ。
 ところで、この「大和」というのはいったい何を指しているのだろう。大和っていうと、普通は「日本」の意味だよなあ…と、こちらも調べてみた。例によって、JRAの「特別レース名解説」を見てみると


大和は、五畿内の1つで、奈良県全域を占める旧国名。飛鳥京、藤原京、平城京などの都が置かれ、室町時代初期までは寺社が大きな勢力を誇っていた。日本の異称としても用いられる。明治9年(1876)に堺県(現在の大阪府堺市)と合併、20年(1887年)に奈良県として分離した。

だそうだ。「大和政権」というときの大和ということか。明治時代まで、奈良のことを大和と呼んでいとは知らなんだ。勉強になりました。

 寄り道はこれくらいにして、予想にいってみたい。
 このレース、ここ5年で1番人気が4連対、2番人気が3連対と、人気馬が期待に応えている。今年もその流れは続くと見て、本命◎はアイアムアクトレス。この時期のダート戦、古馬の壁が高く、明け4歳馬は簡単には勝てないのは承知しているが、この馬ならその壁を乗り越えられると見た。3走前で降した馬は後にGIを勝っている実力馬。叩き2走目で3戦3勝の京都コースと好条件も目白押し。快勝して、フェブラリーSに駒を進めてもらいたい。
 推奨穴馬は4枠の2頭、インオラリオメイショウデイム。前がもつれたら、京都得意の両馬がズバッと差してくるシーンも。

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2012年1月9日月曜日

書評 米原万里『不実な美女か貞淑な醜女か』(新潮文庫)

 日露通訳のエキスパートである米原さんが、一流通訳としての自らの経験を元に、通訳の魅力を存分に語った本。通訳と翻訳の違い、現場でのハプニング、誤訳・珍訳の例、通訳中に頭が真っ白になったときにどうやって回避したかなど、大舞台での豊富な具体例や他の通訳者の経験談が満載。通訳、特に同時通訳に興味のある人は必読である。
 私の場合、妻が通訳を職業にしたいと考えているので、私も本書に興味を持った次第。通訳の醍醐味を感じ取ることができ、妻の気持ちも少しは分かった気がする(「そんなんと違うわよ」と言われそうな気もするけど…)。

 タイトルの『不実な美女か貞淑な醜女か』は第3章のタイトルなのだが、これを本のタイトルにもってくるとは…大胆な試みであることは認めるが、ちょっといかがなものか。
 解説すると、これは訳の「質」を表している。「不実な美女」というのは、日本語としては整っているが原語の意味を十分には伝えていない訳のことで、貞淑な醜女というのは、日本語としては違和感があるが原語の意味を余さず伝えている訳のことである。
 さてどちらの訳が好ましいのか、ということが書かれているのが第3章なのだ。分かっていただけただろうか。

 本書は全5章からなっている。1章は通訳と翻訳の共通点、2章では逆に通訳と翻訳の相違点が述べられている。私は職業柄、翻訳には直接かかわることもあるので、興味深く読むことができた。当たり前だが「時間」という制約が大きな相違点だそうだ。

 3章は上にも述べたように、訳の質について語った章である。原語に忠実なのが良訳なのか、それとも日本語としてこなれているのが良薬なのか、結論は本書を読んで確かめてほしい。

 4章は「初めに文脈ありき」というタイトル。通訳の真髄を語った章だと言えるだろう。原語を介したコミュニケーションというのは、詰まるところ文脈のやりとりであるということがよく分かる。自動翻訳がなかなか使い物にならないわけだ。

 最後の5章は「コミュニケーションという名の神に仕えて」。米原さんの通訳、言語、さらには人生観が述べられた章だ。私が最も興味深く読んだのもこの章だった。特に、外国語よりも先に母国語を磨く必要がある、という話には「やはりそうですか」と納得した。これは、最近でこそ当たり前のようになっているが、本書が出た頃(十数年前)は、バイリンガル教育が流行し、なるべく小さい頃からネイティブの発音に触れさせるほうがよいなどと言われていた時期だ。やはり言語のプロは真実を見極めていたということか。

 通訳に興味のある方はもちろん、言語やコミュニケーションについて学びたい方にも是非読んでもらいたい一冊だ。


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2012シンザン記念、淀短距離S  予想の回顧

 日曜はシンザン記念。本命◎トウケイヘイローは、馬群に入れず外々を回らされ、かかり気味。その分、最後の伸びを欠き、4着まで。外枠が響いたか。
 上位3頭は、いずれも内枠。特に勝ったジェンティルドンナは内をスパッと抜けてきた。枠順が大きく影響したレースだったように感じた。

 月曜は淀短距離S。本命◎エーシンフォワードは、好発から快調にハナを切ると、楽な手応えで2馬身ほどリードして4コーナーを回る。そのまま危なげなく逃げ切り、完勝。見事、期待に応えてくれた。2着には推奨穴馬のスギノエンデバーが入り、馬券もゲット。スギノエンデバーが意外に人気していた(5番人気)ため配当はそれほどでもなかったが、本ブログの本年初的中となった。めでたし、めでたし。

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【お父さんの週末料理】2024年10月26・27日<small>~焼き芋の季節~</small>

 わが家では土曜、日曜の晩ご飯は主に父(私のこと)が担当している。そのメニューを絶賛(?)公開中。  家族構成は父(アラフィフ)、母(年齢非公表)、娘(高2)、息子(中2)の4人。  10月26日(土)   娘は部活の掛け持ち。相変わらず忙しい。息子は通常練習。 ◆朝...